鹿児島県姶良市で、過疎地の小規模小学校が校区外から児童を受け入れる特認校制度が、高齢化が進む地域に活力を与えている。市街地の人口増を背景に新市誕生から14年で特認生が倍増し、特認校5校が連携しPRを強化している。スクールバスや定住促進住宅整備など、市の支援や地域の協力も得て、好循環を生み出している。

 市役所などがある市街地から車で25分ほど。西浦小学校に着くと、地元産メアサ杉で覆われた体育館や校庭の周囲に広がる森に目を奪われる。「とにかくここまで来てもらえれば」。大給善仁校長(55)がそう強調するのもうなずける。

 芝の校庭でのびのび縄跳びする児童。教室に入れば、タブレット端末を器用に使いこなし、積極的に先生に質問。少人数相手のマンツーマン指導も特徴的だ。

 2020年に特認校になり、児童数が一けたに落ち込む恐れが出てきた22年からPRを強化。特認校を除く市内の全12小学校、全ての幼稚園・保育園を訪問し、小学入学前年の子どもの健診時には動画を流した。豊富な自然体験や地域行事、俳句による情操教育をアピール。児童は37人に増えた。大給校長は「親子の悩み、ニーズをしっかり聞くことを大切にして、安定的な学校運営をしていきたい」と意欲を示す。

 特認校になって20年以上の実績がある北山小は、市内で最も多い特認生(全児童44人中36人)を抱える。「一人一人が主人公」をモットーにしたきめ細かな指導が定着。すぐ近くにスターランドAIRAや北山伝承館などの教育施設があり、地元住民が協力するさまざまな体験活動も売りだ。

 特認生の保護者、伊東美穂さん(46)は「先生も地域の方もみんなで育ててくれる。学年を超えたつながりが強いのも魅力」と語る。

 姶良市が誕生した2010年、特認校は北山、竜門、永原の3小学校で特認生は計56人だった。翌年に漆小が加わり、今年は西浦小と合わせ、計5校で111人に上る。

 5校は昨年初めて合同で説明会を開いた。空き教室や学年バランスなどを考慮して受け入れできない場合でも、他校につなぐことがあるという。

 市も過疎地の学びやの維持を後押ししている。各特認校地区の定住促進住宅をそれぞれ4戸以上整備し、昨年は特認生を抱える世帯がより入居しやすくなるよう条例を改正。特認生の増加に伴い、昨年までに各校にスクールバスを配備した。

 北山校区コミュニティ協議会の山元英美会長(65)は「少子高齢化は進んでいるが、子どもの声で地域は活性化する。力を合わせ学校を守っていく」と、地元も一体となって特認校を支える考えを示した。