映画『ディア・ファミリー』(6月14日公開)の家族決起会見が4月24日、明治記念館にて行われ、大泉洋、菅野美穂、福本莉子、川栄李奈、新井美羽ら家族キャストと、監督を務めた月川翔が出席した。

世界で17万人もの命を救うことになるIABP(大動脈内バルーンパンピング)バルーンカテーテルの誕生秘話を映画化した本作に登場する坪井一家。小さな町工場を経営する父の宣政を大泉が、宣政を支える妻の陽子を菅野、心臓疾患を抱える次女の佳美を福本、3姉妹を支える長女の奈美を川栄、三女の寿美を新井が演じている。佳美に突きつけられた「余命10年」の宣告。宣政は、娘の命を救いたい一心で人工心臓の開発を始める。23年間におよぶ家族の愛の実話をもとに描く本作の出演について大泉は、「自分にも娘がいます。撮影期間は、つらい気持ちになるだろうと思っていました。でも、企画書を見て宣政さん、そして坪井一家の物語を“知りたい”と強く思わされました。つらい日々になるかと思ったけれど、僕が演じる意味、意義はあるんじゃないかなと」と作品への思いに触れる。

同じく娘を持つ月川監督も一家の父にとても興味を持ったとし、「医療知識のない町工場のお父さんが医療器具を開発する。このお父さんにはなにがあったのか。家族とどんなやりとりがあったのか知りたかった。知りたくなると同時に(こういう事実があるとことを)伝えたいと思いました」と作品に携わる際の心境を振り返った。

菅野は大泉の佇まいに触れ、「すごく親しみのある方。大泉さんにしかない“抜け”の感じ。飄々とした佇まいで、大泉さんにしか出せないニュアンスがあります。大泉さんが演じることでより宣政さんに親しみが湧く。そういう形で届けられるのは大泉さんの持ち味だと思います」と大絶賛。菅野いついて大泉は「明るい方だとは思っていたけれど、予想を突き抜けて明るくて(笑)。菅野さんが現場に入ると控室の笑い声でわかるんです。“やってきたな”って。頑張ろうというエネルギーがもらえる、歩くパワースポットのような存在です」と共演の印象や現場の様子に触れ笑わせた。

福本は佳美のキャラクターから感銘を受けたと振り返る。「自分だったらへこたれちゃって悲しくなる。でも、佳美さんはそうじゃない。常に前を向いて、一日一日を大事に生きていました。“次はどうする?”と常に前を向く坪井一家のマインドにも感銘を受けました」と力を込めていた。

しっかり者の長女を演じた川栄は「お姉ちゃんとして強くいれたらいいなと思っていました。三姉妹の絆、親しみやすいお姉ちゃんになったらという気持ちでした」とニッコリ。月川監督からの「安心の川栄さん。ベテラン俳優のような安心感と子どものような瑞々しさを持つ方。相手のお芝居に柔軟に反応して溶け込んでくれる」との褒め言葉に「私も月川監督のことはとても信頼しています」と返答。続けて「監督がOKと言ったらOKと思って、自分の芝居に納得がいかなくても、もう一回と言ったことはなくて。でも、今回この業界に来て初めて“もう一回やらせてください”って言っちゃいました。となると1回で成功させなきゃいけないという考えが浮かんで、役としてではなく川栄李奈が出てきて焦りだしちゃって。結局10回以上やり直すことになって、1時間押すというご迷惑を…」と申し訳なさそうに明かすと、坪井一家を演じたキャスト全員が大爆笑。

最後に一番いいのが撮れたと笑顔を見せた月川監督は「僕のOKがダメってことは、1回目以上のものにOKを出さなくてはいけない。僕もプレッシャーでした」と苦笑い。しかし「大満足の一番好きなシーンが撮れました!」と太鼓判。キャスト全員が安堵するなか、大泉が「役者の“もう1回お願いします”は諸刃の剣だからね」と笑い飛ばし、全員が“わかる!”いった様子で頷いていた。

三姉妹を演じた福本、川栄、新井は役者としてさまざまな壁を乗り越えていたようで、たくさんの“乗り越え”エピソードが飛びだすなか、「自身の乗り越えた壁」という質問に答えることになった大泉と菅野。大泉は歌手として初出場した昨年の紅白歌合戦を挙げ、「パッと歌って帰ってくりゃいい、司会と違って今年の紅白は暇だなと思ってたんです」と切り出す。緊張するから待ち時間には本番の様子を観ない方がいいと福山(雅治)からアドバイスがあったものの、観なきゃいけない状況になったと明かす。

「司会の有吉(弘行)さんから“ここまでの司会どうでしたか?”という質問が来るって書いてあって。仕方ないから観ることに。そしたら、福山さんの言うとおり緊張していって。歌う前はガクガク。どうしようと思っていたら、時間が押していたようでその質問がカットになっちゃって。ただただ緊張するためだけに(本番を)観ただけになっちゃいました」とガックリ。「これが紅白か、と思いました。しかもOKの瞬間、腰が抜けて立てなくなっていたのに、場面転換があるから“はけてください!”って言われて」とニヤニヤ。「ひとつも映画と関係ない話ですが…」と恐縮しながらも大泉節を盛り込み、しっかり笑いを誘っていた。

妻役の菅野も映画とは関係ない壁エピソードで取材陣を笑わせる。大泉の「母さん…」という振りに「あなた…」と返し、コントのような形でトークをスタート。「この間たけのこ掘りに行ったのよ。山を乗り越えたわ。掘っても掘っても出てこないのよ」とノリのいい話し方で笑わせる。50代が見えてくる年齢になり、新しいことに遭遇する機会がそれほどないと前置きした菅野は日々の出来事に目を向け、大切にしながら家族との時間を過ごしていると補足していた。

イベントの締めには、家族決起会見にちなみ、家族に気合を入れるようにリクエストされた大泉が「すばらしい物語を少しでも多くの方に見てもらうために頑張っていこう! 我々はこれから宣伝ファミリーとなる!休みの日は全部宣伝だ!」と気合を入れ、家族の絆を確かめ合っていた。

取材・文/タナカシノブ