MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、「猿の惑星」シリーズの新サーガ第一章、高山一実原作のアイドルを目指す少女の物語、真っ直ぐな「好き」が起こす奇跡を描く松居大悟監督最新作の、バラエティ豊かな3本。

■サルと人間の共存というテーマの上に立脚した、スリリングな冒険ドラマ…『猿の惑星/キングダム』(公開中)

知能の発達したサルと、退化した人間の、立場が逆転した世界を描く「猿の惑星」シリーズの完全新作。前作から300年後、サルの独裁者プロキシマスの軍に父を殺された若いサル、ノア(オーウェン・ティーグ)は村の仲間を救うための旅の途中、プロキシマスに追われる人間の少女ノヴァ(フレイヤ・アーラン)と出会ったことで、強大な権力に立ち向かうことになる。

抑圧された主人公が抵抗するというシリーズの基本ストーリーに立ち戻り、自由のための戦いを活写。「メイズ・ランナー」シリーズのウェス・ボール監督が、サルと人間の共存というテーマの上に立脚した、スリリングな冒険ドラマを演出する。人間の驕りを見据える、シリーズならではの視点も生きた力作!(映画ライター・有馬楽)

■現役アイドルだった作者が、アイドル活動のなかで感じたものとは?…『トラペジウム』(公開中)

乃木坂46の1期生、高山一実が2016年から雑誌「ダ・ヴィンチ」で連載、累計30万部突破のヒットとなった長編小説をアニメ映画化。アイドルに憧れる主人公の女子高生、東ゆうが、仲間を集めてアイドルグループ“東西南北“を結成し活動する物語。アイドルという一時の輝きか、何十年先を見据えた自分たちの将来か。また、ビジネスか友情か。2つを天秤にかけた時、メンバーの心がすれ違っていく。

主人公のゆうを、「となりの妖怪さん」の杉本睦実(むーちゃん)役で注目の結川あさきが熱演。メンバー役として、「僕の心のヤバイやつ」などで人気急騰の羊宮妃那、『アリスとテレスのまぼろし工場』(23)などでヒロインを務める上田麗奈らが脇を固める。連載当時まだ現役アイドルだった作者が、アイドル活動のなかで感じたものとは?タイトル「トラペジウム」の真の意味、高山が作詞を務めたエンディングテーマ「方位自身」など、様々な伏線が回収されていく怒濤の終盤は目が離せなくなる。(ライター・榑林史章)

■いまの気持ちを大切にしている人たちを応援する新たな傑作の誕生…『不死身ラヴァーズ』(公開中)

『ちょっと思い出しただけ』(22)、『くれなずめ』(21)などの松居大悟監督が、構想10年を経て実現させた念願の企画の映画化。高木ユーナの同名コミックが原作の本作は、両想いになった瞬間、この世界から忽然と消え、その後の人生にも何度も現れては同じ瞬間に消えてしまう男性のことを好きになったヒロイン、長谷部りのをめぐる青春ラブストーリー。

映画初単独主演の三上愛が、「甲野くん(佐藤寛太)のことが好き」という気持ちだけでガンガン突き進むりのを溢れんばかりの笑顔と全力疾走で体現。最初のうちはハイテンションで、ややオーバー気味の芝居の彼女の「好き」「好き」モ―ドに圧倒されたり、なかには、ちょっと引いてしまう人もいるかもしれない。しかも、「好き」と言った途端に甲野くんが何度も消えてしまうから、りのと一緒に“何で?何で?”って頭の中が大混乱。ところが、その謎の構造が中盤で反転し、映画のタッチも地に足のついたリアルなものに変わってくるあたりから、“人を好きになる”ということの本質的なテーマが松居監督らしい体温で浮かび上がってくるから心憎い。三上が劇中でギターをかき鳴らしながら熱唱するGO!GO!7188の「C7」も、りのの想いの強さを増幅させていて思わず聴き入ってしまう。過去でも未来でもなく、いまの気持ちを大切にしている人たちを応援する新たな傑作の誕生だ。(映画ライター・イソガイマサト)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼