県伊那文化会館(伊那市)は13日、同館で開催中の展覧会「生誕150年池上秀畝展〜ただ絵が好きで好きで」に合わせ、耳の聞こえない人も聞こえる人も参加できる「筆談で鑑賞会」を開く。参加者全員で白紙を囲み、秀畝の作品を見て浮かんだ感想や疑問を寄せ書きのように文字や絵で書き出す。その後、書かれた内容を読み合ったり、質問を書き込んだりしながら作品を読み解く。

 進行役を務めるのは、自身も聴覚に障がいがあり、全国各地で筆談による鑑賞会を開いている小笠原新也さん(62)=東京都=。小笠原さんは東京で会社員として働く傍ら、8年前から徳島県の県立近代美術館でワークショップの企画運営などに携わっている。筆談による鑑賞は対話を重ねながら芸術作品を鑑賞する「対話型鑑賞」の一つとして、6年前に同館で始めた。

 県内で行うのは県伊那文化会館が初めて。いろいろな人がフラットに作品を鑑賞し、参加者同士で異なる価値観や見方を楽しんでほしい―と小笠原さんを招いた。

 小笠原さんは「聞こえる人の中にも話すより書く方が得意な人はいる」「自分と同じ考えを先に発言されたら言うのをためらってしまうこともあるが、それはもったいない」と指摘。「筆談ならみんな同時に書くことができる。同じ内容を書いたとしても認めてもらえ、逆に全く反対の考えを書いてもいい」と筆談による鑑賞の魅力を温かなまなざしで語る。

 当日は、秀畝の作品が並ぶ美術展示ホールで鑑賞する。小笠原さんは「新しい見方や発見を伝えてほしい。皆さんと一緒に楽しみたい」と話している。

 時間は午後1時30分から。対象は小学生以上。参加無料(同展観覧券が必要)。定員は10人(先着)。当日の受け付けは午後1時から。

 問い合わせ、申し込みは同館窓口、または(電話0265・73・8822、ファクス0265・73・8599)へ。ホームページの専用フォームでも受け付けている。