大嫌いだった昔の職場の上司。時が経ち、部下から上司になった自分は果たして違うのだろうか? 繰り広げられる無自覚な問題行動を実例を元に考えてみる。
◆“異論・反論は大歓迎”も結果飛ばされ……

「部下には『異論・反論は大歓迎』と口にし、総務部の自分は立場的にも“会社の調整役”と思っていました。でも、現実はそうじゃなかった……」

そう話すのは、地方の食品メーカーで部長職を務める藤本秀和さん(仮名・55歳)。昨年春、遠方の支社への異動を命じられた際に、自身が若手たちの害になっていることに気づいたと明かす。

「決定打になったのは、3年前の工場の建て替え業者選びです。若手が付き合いのあったA社ではなく、1円でも安いほうのB社を僕が提案。部署内の意見をまとめる段階で、反論に対して、完璧な見積もりを見せてあげたんです。『これより安い見積もりが出せるなら、聞くよ。もう一度調べてみな』と、度量の広さを見せたつもりなんですが……」

ところが、いざ工事が始まると大きな問題に直面する。

「途中、細かい変更点がいくつも出てきたのですが、『事前の契約にないため、追加料金を頂くことになる』と言われたんです。結局、最終的な費用は、A社の提示額を大幅に超えてしまいました」

◆会社から問題視されたのは…

実は、A社は工期の延長や新たな資材が必要にならない範囲なら費用も変わらず、目先のコストを重視した藤本さんの判断は裏目に出てしまう。だが、それ以上に会社からは部下の意見に耳を傾けなかったことを問題視されたのだ。

「専務には『君がやっていたのは部下の話を聞くだけ。最初から自分の中では結論ありきで若い社員たちの仕事を増やしていた』と叱責を受けました。部下とはその後も表面上こそ普通に仕事をしており、異動の際は送別会を開いてくれましたが、陰では『いなくなってくれてせいせいした』と口にしていたそうです。今さらながら嫌いで仕方なかった昔の上司に自分がそっくりなことに気づきました」

過去の反省を踏まえ、現在は自分の意見を主張することは極力控えている。最低限のアドバイスのみで部下の自主性に任せているという。

取材・文/週刊SPA!編集部
※2月27日発売の週刊SPA!特集より