日本にウエディングドレスを広め、芸能人らの門出に花を添えた桂由美さん。94歳で亡くなったことが発表されると、感謝や追悼のメッセージが数多く寄せられている。

 それは、あたたかい人柄によるところも大きいのだろう。女優の川島なお美さんの披露宴でのドレスも手掛けた桂さんは、2015年に川島さんが亡くなると、公の場で涙を見せた。当時取材にあたった芸能リポーター、小柳美江さんが言う。

「川島さんのお通夜の前日のことでした。東京は日本橋の三越本店で桂由美さんの『ブライダル50周年記念展』が開かれ、そこに川島さんがウエディングドレスを着て登場する予定であったことを話してくださいました。川島さんが、ドレスにとても強いこだわりをもたれ、細部にわたって何度も綿密な打ち合わせをしたという思い出を振り返られているうちに、涙があふれ、川島さんが仕上がったドレスを大喜びしてくれたと泣きながら話してくださいました。川島さんの披露宴から6年の月日が流れていましたけど、きのうのことのように克明に覚えてらっしゃいました」

 小柳さんはこの後日、桂さんから“直撃取材”を受けたことがあるという。

「都内のある病院入り口で某有名人が出てくるのをマイクを持ってカメラさんと待機していたところ、後ろから、声をかけられたんです。トレードマークのターバンを巻かれ、『なにがあったの?』『誰を待ってるの?』などと次々に質問されました。目を輝かせ、とても好奇心旺盛な方なんだと思うとともに、急に距離が縮まったような気持ちになりました」

 ワイドショー顔負けの百戦錬磨のリポーターを籠絡してしまったのであった。

 たくさんの花嫁たちを美しく演出し、祝福した。島田陽子に秋吉久美子、とよた真帆らと親交の深いプランナーでスタイリスト、林杏奈さんもそのひとり。

「知人を介して、初めてお目にかかったのがパリのリッツホテルでした。緊張する私に気を配り、リラックスさせてくれて、世界的に高名な方なのに、ほほ笑みを絶やさず、こちらに合わせてくださいました。なにより人格者であることに、魅了されました。ドレスは私の好みのイタリアの生地がつかわれ、とても奇麗で一目ぼれ。キャピトル東急での挙式披露宴は1990年で、もうホテルもなくなってしまいましたけど、一生の思い出です」

 関係者によると、バブル期、桂由美さんのウエディングドレスはレンタル1回でも約35万円から。通常10万円のところ、3倍超だったにもかかわらず、大人気だったそうだ。フルオーダーだと100万円から。桂さんのブライダルファッションショーでは、数多くの女優らが美しいドレスに身を包み、世の女性たちのため息を誘った。生前、桂さんは趣味について「花を見ること、デザインをすること」とし、座右の銘をこう答えている。

「この道より我を生かす道なし。この道を歩く」と。

 自民党の婚活議連の活動にも参加するなど日本のウエディング界を彩った生涯だった。