今年1月に長野県で開催されたスピードスケート・ショートトラックの全日本選手権女子500メートルを、福岡県糸島市出身の黒川輝衣さん(23)が制した。4月9日には市役所を訪問し、月形祐二市長に報告。2026年冬季五輪の代表入りを目指し、さらなるレベルアップを目指す意気込みを語った。

 同市の南風小1年でバスケットボールを始めた黒川さん。持久走では学年の女子トップで運動が得意だった。5年時に「スポーツで世界の舞台に立ちたい」と県の「タレント発掘事業」に参加。さまざまなスポーツに触れる中で、スピードスケートのショートトラック種目に出合ったという。

 6年から本格的に挑戦を始めると「まったくできない状態から、どんどん上達するのが楽しかった」。高校からは都内に進学し、1人暮らしをしながら名門クラブチームで切磋琢磨(せっさたくま)した。卒業後は「ヨコハマタイヤジャパン」に所属。北海道などを拠点に練習漬けの日々を過ごし、2022〜23年シーズンは全日本選手権500メートルで2位に食い込んだ。

 フィジカルを強化して挑んだ23〜24年シーズン。10月の全日本距離別選手権の500メートルは2位だったが、万全の調整で迎えた1月の全日本選手権を初制覇した。さらに2季連続でワールドカップ(W杯)と世界選手権にも出場。500メートル、1000メートルでベストタイムを更新する飛躍のシーズンとなった。

 「瞬間的な加速に自信があり、500メートルが得意。世界とのトップスピードの差を詰めて、五輪に出場できるよう頑張りたい」と黒川さん。3月下旬からの約1カ月のオフは糸島市の実家に滞在し、基礎トレーニングを続けながら英気を養っている。日本スケート連盟の関係者によると、24年度も強化選手として、長野県を拠点にレベルアップを図る方向という。

 この日の訪問で月形市長は「五輪出場報告で会えることを楽しみにしています」と激励。県タレント発掘実行委員会の手島和人事務局長は「福岡出身で、冬季競技で活躍できている人は少ない。今後のいっそうの飛躍を期待しています」と語った。(竹森太一)

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