PRESIDENT Online 掲載

■「新卒一括採用・年功序列・終身雇用」の終わり

足許、中途採用を積極的に行うわが国の企業は急増している。新卒の採用に関しても、春の一括採用から通年採用にシフトする企業は増えた。一定の年齢の管理職や社員の給与を引き下げる、いわゆる“役職定年”を廃止する企業もある。これまでの“新卒一括採用・年功序列・終身雇用”を代表とする、わが国の雇用・労働市場の慣行は急速に崩れ始めている。

今後、そのペースは加速するだろう。わが国の雇用慣行に変革が起きると、企業や私たちの身の回りにも見逃せない変化が起きる。雇用が流動化することで、働く側にとっては自らの能力を発揮しやすくなるだろう。高い収入を手に入れるインセンティブも高まる。それは、企業の業績拡大やわが国経済の活性化に必要といえる。

重要なポイントは、雇用慣行の崩壊に労使、および政策当局がいかに対応するかだ。わが国企業の経営者にとって、採用・人材開発などに関する発想転換の重要性は増す。働く側は実力をつけ、自分の価値を上げることが必要になる。

政策当局は、個々人がより積極的に能力発揮を目指す環境整備を行うことが求められる。労働市場の改革は、わが国経済にとって重要なファクターだ。短期的には痛みを伴うが、避けて通れない問題と認識すべきだ。

■中途採用の比率は全体の43%に達している

近年、中途採用を増やす国内の主要企業は急速に増えている。報道によると、2024年度、主要企業の中途採用数は前年度比15.0%増、12万6309人だった。一方、来春に入社を予定する新卒採用数(高校卒業者含む)は同14.7%増の16万7223人。採用計画全体(29万3532人)に占める中途採用の割合(中途採用比率)は約43.0%に上昇した。2010年度以降の最高を更新した。

2023年度の37.6%など過去の水準と比較しても、中途採用比率の上昇の勢いは強まっている。これまでだと、必要に応じて、その都度、中途採用の募集をかける企業は多かった。ところが最近では、通年で良い人材を社内ではなく、労働市場から相応の対価を支払って採用する方向に人材戦略はシフトしている。

要因の一つとして、少子化、高齢化、人口の減少によって、わが国の生産年齢人口は趨勢的な減少傾向にあることがある。既存の事業体制を強化し生産性を引き上げることや、新規分野でグローバルに競争力をつけるため、実力と実績のある“プロ”を成長戦略の一環として採用する必要性は高まっている。