Saqib Iqbal Ahmed

[ニューヨーク 27日 ロイター] - 外国為替市場が異例の落ち着きを保っているため、キャリー取引の人気が大方の予想よりも長く続いている。

低金利の通貨を借りて高金利の通貨に投資するキャリー取引は、主要中央銀行が金融緩和に軸足を移すにつれて衰退すると予想されていた。しかし為替市場が平静を保っているため、為替の安定に依存するキャリー取引は好調だ。

コーペイ・グローバル・ペイメンツ社の分析によると、円を売ってメキシコペソを買った場合、過去12カ月で約44%のリターンを得たことになる。キャリー取引の投資先として人気の他の通貨も同様に大きなリターンを上げている。  

しかし潮目は変わりつつあるかもしれない。新興国ではインフレ鈍化を受けて今年金利が引き下げられ、高利回り通貨と低利回り通貨の金利差が縮小する可能性がある。ブラジル、チリ、コロンビアに続きメキシコも利下げを開始した。

キャピタル・エコノミクスのシニア市場エコノミスト、ジョナサン・ピーターセン氏は、2023年に一部通貨に大幅な上昇をもたらした追い風は一巡したようだと述べ、「キャリー取引は息切れしそうだ」との見方を示した。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの為替担当シニア・ポートフォリオ・マネジャー、アーロン・ハード氏は「過去1年半のような全てがクリアな環境ではない」とし、より慎重に低リスクのキャリー取引を目指していると話した。

同氏はその上で、円は急激な変動に弱いため調達通貨を円からスイスフランに切り替えているとし、インドルピーを買い、中国人民元を売るのが好ましいと述べた。

<ボラティリティーが鍵>

主要9通貨ペアのボラティリティー指数であるドイツ銀行のCVIX指数は最近、約2年半ぶりの低水準を記録した。これはキャリー取引を直ちに終了するような状況ではないことを示している。

ING(ロンドン)の為替ストラテジスト、フランチェスコ・ペソーレ氏は「市場は1月か2月がよりボラティリティーの高い月になると予想していたのではないか」と話す。米経済指標が悪化し3月か5月の利下げが正当化されるという展開を市場は見込んでいたが、実際の指標は力強い結果になったと指摘。「キャリー取引の人気が比較的高い状態があと数週間続くことは間違いない」と述べた。

スイス国立銀行(中銀)の予想外の利下げや日銀のマイナス金利からの脱却など、過去数週間に金利に関する重要な動きがあったにもかかわらず、ボラティリティーは低水準にとどまっている。

ドル/円の3カ月物予想変動率(インプライド・ボラティリティ)は約3カ月ぶりの低水準付近だ。

しかし小さな要因で市場が動揺しキャリー取引が混乱する可能性があるとアナリストは指摘する。

キャピタル・エコノミクスのピーターセン氏は「為替市場の状況がさらに落ち着くというのは非常に考えにくい」と語った。中銀の政策や経済指標、地政学的な動き、米国など各国の選挙などからサプライズが起こり得るとし、今後はボラティリティーが非常に高まりやすいと述べた。