Clara Denina Sarah McFarlane Maha El Dahan

[ロンドン/ドバイ 8日 ロイター] - サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコとアラブ首長国連邦(UAE)のアブダビ国営石油会社(ADNOC)は、油田塩水からリチウムを抽出する計画だ。両国は電気自動車(EV)への転換を図り、産業の多様化と利益確保に向け取り組んでいく。3人の関係筋が、ロイターに明らかにした。

世界で化石燃料から脱却する動きがみられる中、米エクソンモービルやオクシデンタル・ペトロリアムなど他の石油大手は、塩水からリチウムをろ過する新技術を取り入れる計画だ。

事情に詳しい3人の関係筋によると、アラムコとADNOCは、リチウム採掘事業において、ごく初期の段階にあるという。

アラムコとADNOCは、採用予定の直接リチウム抽出法(DLE)に関する詳細を明らかにしていない。

DLE技術はまだ初期段階で、生産面での経済性は原油よりも極めて確実性に乏しい。

世界の主要リチウム生産国のオーストラリアやチリで行われている露天掘り鉱山などでの採掘ではコストが高く、環境への悪影響といった問題があるが、DLE技術ではこれらの問題を回避できる利点がある。

リチウム価格は、2022年11月に高値を付けて以降、約80%下落している。EV販売低迷で、一段と供給過剰になっている。

しかし、大手自動車メーカーは、今後の需要を見込み、新たなリチウム調達を模索している。

サウジアラビアは、国内EVブランド「Ceer」を立ち上げ、EV用金属工場を建設。政府系ファンド「パブリック・インベストメント・ファンド」(PIF)は、2030年までに年間50万台のEV生産を目指している。

サウジアラビア最大の国営鉱物資源会社(マーデン)は、海水からのリチウム抽出に取り組んでいる。 サウジ産業・鉱物資源省の高官は昨年12月、リヤドでの記者会見でロイターに「マーデンとアラムコと連携し、良好な研究を進めている。廃棄油田には多くの油田塩水が含まれ、鉱物も豊富にある」とし、「抽出作業はうまくいっており、ナトリウムやマグネシウム、微量のリチウムを採掘できている。技術はまだ初期段階にあるが非常に有望で、投資する価値がある」と話していた。