新規上場企業の20%以上が利用する法人カード(*1)「UPSIDER」をはじめとした金融サービスを提供する株式会社UPSIDERが、スタートアップの経営者(※個人事業主除く)を対象に「スタートアップ企業の資金調達」に関するアンケート調査を実施した。

(*1)2022年に東証グロース市場(マザーズを含む)に株式を上場した企業に占めるUPSIDERユーザーの割合。自社調べ。

株式上場に向けてネックとなっているのは「資金面」。小粒上場の原因は「大型の資金調達の難しさ」「資金の出し手の少なさ」の回答が上位

まず回答者が経営するスタートアップ企業の客観的に見た成長フェーズについて質問したところ、「ミドル(42.9%)」と回答した人が最も多く、次いで「アーリー(30.5%)」「シード(16.6%)」「レイター(10.0%)」と続いた。

次に、株式上場を目指す企業の経営者にとって株式上場に向けてボトルネックとなっているポイントを聞くと、「資金面での課題(34.5%)」と回答した人が最も多く、次いで「経営体制の整備(32.7%)」「株式上場は目指していない(24.4%)」と続き(*2)、株式上場に向けて3割以上が資金面での課題がボトルネックとなっていると回答したほか、経営体制の整備もボトルネックになっている人が多いことが判明した。

さらに、時価総額が低いまま上場する「小粒上場(小粒IPO)」の原因について尋ねたところ、「大型の資金調達が難しい(23.6%)」と回答した人が最も多く、次いで「資金の出し手が少ない(22.8%)」「適切なタイミングの見極めが難しい(21.8%)」と続いた(*3)。

この調査から、株式上場に向けてボトルネックとなっているポイントについて、「資金面の課題」と回答した人が最多であり、小粒上場の原因としても資金に関する内容が回答を集める結果となった。

(2)回答は複数選択式で、選択肢は「資金面での課題」「経営体制の整備」「内部統制の構築」「業績の安定性・成長性」「法令遵守とリスク管理」「市場からの認知度・ブランドイメージ」「適切なアドバイザーの不在」「株式上場は目指していない」「その他(具体的に)」の9項目。 (3)回答は単一選択式で、選択肢は「大型の資金調達が難しい」「資金の出し手が少ない」「投資家の関心不足」「適切なタイミングの見極めが難しい」「経済環境の変化」「その他(具体的に)」の5項目。

資金調達の際に重視することは「調達までの意思決定の速さ」。ただし実態とはギャップあり

続いて、スタートアップ経営者のデットファイナンスへの関心について探るべく、デットファイナンスの活用・検討についても尋ねたところ、回答者の13.8%が「すでに活用している」、37.5%が「検討したことがある/検討中である」を選択し、「聞いたことはあるが未検討である」は27.3%、「聞いたことがない」は21.4%という回答結果になり、回答した半数以上の経営者がデットファイナンスを活用もしくは検討済みということが分かった。

次に、手法(エクイティファイナンス、デットファイナンス)にかかわらず、資金調達の際にどのような観点を重視するのかについて質問した結果、「資金調達までの意思決定が早い(59.7%)」と回答した人が最も多く、次いで「調達額(チケットサイズ)が大きい・交渉相手が少ない(52.3%)」「株式の希薄化を抑えられる(44.3%)」と続いたことから、約6割の回答者が意思決定までのスピードを重視していることが分かった(*4)。

(*4)回答は上位3項目を選ぶ複数選択式で、選択肢は「株式の希薄化を抑えられる」「資金調達までの意思決定が早い」「調達額(チケットサイズ)が大きい・交渉相手が少ない」「担当者のビジネス理解度が高くサポーティブ」「次回ラウンドもフォローできる」「技術や営業、採用の支援が得られる」「利子、手数料が安い」「その他(具体的に)」の8項目。

さらに、実際に資金調達を実施する際に課題と感じている点についても質問したところ、「調達までの意思決定が遅い(32.5%)」と回答した人が最も多く、次いで「調達額(チケットサイズ)が小さい(27.2%)」「利子、手数料が高い(27.2%)」と続いた(*5)。

この結果からも、資金調達において重視されるポイントは調達までの意思決定スピードである一方、もっとも課題がある項目も同様に意思決定スピードであり、理想と実態にギャップがあることが分かる。

そして、資金調達にあたり人的資本の観点での課題についても聞いてみると、「投資家とのネットワークが不足している(36.3%)」と回答した人が最も多く、次いで「CFOがおらず担当できるリソースがない(31.1%)」「適切な情報やアドバイスが得られない(28.9%)」という結果になった(*6)。

(5)回答は複数選択式で、選択肢は「バリエーションが折り合わない」「エクイティを中心としている以上希薄化が抑えられない」「調達までの意思決定が遅い」「調達額(チケットサイズ)が小さい」「担当者のビジネス理解度が低く協力的でない」「次回ラウンドのフォローが期待できない」「技術や営業、採用の支援が得られない」「利子、手数料が高い」「その他(具体的に)」の9項目。 (6)回答は複数選択式で、選択肢は「適切な情報やアドバイスが得られない」「CFOがおらず担当できるリソースがない」「投資家とのネットワークが不足している」「資金調達に関するスキルや経験が不足している」「資金調達戦略の立案と実行のギャップがある」「その他(具体的に)」の6項目。

67.5%の経営者が「今の社会に大きな変化をもたらしたい」と回答

最後に、スタートアップの経営者が社会に変化をもたらしたいと思っているかどうかについても尋ねた結果、「今の社会を変えたいと強く考えている」と「どちらかというと今の社会を変えたいと考えている」の回答割合を合計すると、全体の7割弱である67.5%に及んだ。

【調査概要】「スタートアップ企業の資金調達」に関する調査
調査期間/2024年3月19日(火)〜2024年3月20日(水)
調査方法/リンクアンドパートナーズが提供する調査PR「PRIZMA」によるインターネット調査
調査人数/501人
調査対象/調査回答時にスタートアップの経営者(※個人事業主除く)であると回答したモニター
調査元/株式会社UPSIDER(https://up-sider.com/)
モニター提供元/ゼネラルリサーチ

スタートアップの経営者約500人に対して「スタートアップ企業の資金調達」について尋ねた今回の調査では、半数以上の経営者がすでにデットファイナンスを活用もしくは検討済みであり、資金調達の際に重視するポイントの上位にも「株式の希薄化を抑えられること」を選択するなど、デットファイナンスへの期待の高まりが明らかになった。

また、スタートアップの経営者が持つ資金調達に関するニーズとして、回答者の約6割が「速さ」を、約5割が「大きさ」を選択した一方で、資金調達の課題としてもスピードが指摘され、資金調達に関する理想と実態にはギャップがあることが分かった。

今回の調査結果から、社会の変革に挑戦するスタートアップ経営者が持つ資金調達に関する課題に対しては、意思決定までが速く、チケットサイズが大きなデットファンドがひとつの解決策になり得ると結論づけられそうだ。

さらに、時価総額が低いまま上場する「小粒上場」の抑止にも繋がるベンチャーデット市場の広がりは、岸田政権による「スタートアップ育成5か年計画」の後押しも受け、ますます加速していくものと考えられるのではないだろうか。