今年4月から大手ホストクラブグループを中心に、売掛禁止が実施されている新宿・歌舞伎町。その影響なのか、ホストクラブの客層にも変化が訪れているようだ。現地で取材した。

売掛禁止で“ホスト離れ”が加速

昨年12月、吉住健一新宿区長と、歌舞伎町のホストクラブグループ店経営者らが出席して行なわれた連絡会で、ホストクラブ側は今年4月から売掛を全廃とするとしていた。

しかし、実際には「売掛」が「立替」と名前を変えただけで、実質的なツケ払いはいまだに横行していることを#1で報じた。一方、表向きとはいえ売掛禁止の影響か、歌舞伎町のホストクラブで客層の変化が起きているという。

4月6日土曜日の朝4時30分ごろ。歌舞伎町を訪れると、タクシーが行き交う大通りにアフター(店外デート)終わりと思われるスーツ姿のホスト男性とその女性客らしきカップルなどが多数、確認できた。とはいえ街を歩く人の数は去年のおよそ半分ほどといったところ。

ホストクラブの電飾看板がズラリと並ぶ一角でも、ベロベロの状態で女性と自転車で二人乗りをしていたり、泥酔してうずくまる女性を尻目に「ギャハハ」と談笑、はたまた駐車場で立ち小便するホスト風の男など、歌舞伎町の夜明けらしい光景が広がっていたが、かつての盛り上がりと比べるとずいぶん控えめな印象だ。

その理由について長年ホストクラブに通う30代の女性は、「売掛の縮小がはじまってから、女の子たちのホスト離れが起きている」と説明する。

「売掛がなくなってつまらなくなった」 

「以前までは、月末の締め日に担当(ホスト)のために高額な掛け(売掛)をして、翌月の返済日までに風俗店に鬼出勤したり、スキマ時間に立ちんぼしたりして死ぬ気で稼ぐ、というホス狂の流れがありました。もちろん辛いんですよ? でも、なんだか生きている実感もあったんです」

それが今年4月に売掛禁止になり、変化がおとずれた。

「事前に現金を用意しないと遊べなくなったし、担当に『立替』してもらうにしても20〜30万円程度で、バンバン売掛してたころに比べると物足りない。返済日も明確に決まってないから『この日までに死ぬ気で稼がなきゃ!』という気持ちになれず、つまらないんですよね……。

私の知人にも売掛縮小が始まった今年1月から『もう担当のためにがんばれそうにないかも』とホスト通いをやめたり、まだこっそり売掛をやっている別の店舗に流れたりする子が出てきました」(同)

時刻は午前5時過ぎ。泥酔してろれつが回らないながらも、街ゆく女性を片っ端からナンパする2人組男性や、「帰りたくない―!」と泣き叫びながら男性とタクシーを待つ女性など、日の出とともに奇行にはしる男女も増えてきた。それでも、酔いつぶれて路上に寝ていたり、「ふざけんな、金返せ!」とホストの胸ぐらを掴む女性の姿で溢れていた、去年までのカオスな様子は見られない。

「それは、きっと掛けが廃止されて、情緒が安定している昼職の子が増えたからでしょう。彼女たちはナイトワーク1本の女の子と違ってクレジットカードを使えるし、消費者金融で多額の現金を借りられる。

売掛した女の子に飛ばれるよりも、そういう昼職の女の子のほうが信頼できるから、きっとホスト的にもありがたいんですよね」(同)

反対にロリータや地雷系ファッションといった、いかにも“風俗嬢っぽい恰好”をしている女性に対しては、新規入店の際に「すみません、いま席が埋まってまして……」と入店拒否するケースも増えたという。

今後は“普通の”女性たちがホストで借金を抱える?

このような背景から今年に入って昼職や女子大生といった“普通の”女性をターゲットにするホストクラブが増加していると、この女性は話す。

「夜職に免疫のない女子大生やOLを沼らせるために、TikTokやインスタグラムでライブ配信をしたり、SNSでアイドル的に売り出してファンをつくろうとするホストがとても増えました。

また、私の担当は女子大生の客に『友達を呼んできてくれたらサービス弾むよ〜』と言って集客してると話していました。今後は地雷系ではなく、そういう普通の子がホストにハマって借金を抱えるケースが増えるんじゃないでしょうか」

時刻は朝6時。歩道に設置された消火器ケースに腰を打ちつけながら「ああー、気持ちいい〜」と叫ぶ男性とそれを見て笑う女性、「私のこと好き?」「うん、好きだよ」と愛をささやき合った後に女性をタクシーに乗せて見送るや否や、近くの路上で別の女性と合流してそのままホテル街へと消えていくホスト風男性など……この時間はアフター終わりの男女が歌舞伎町を跋扈するピークタイムだ。

朝7時をまわっても歌舞伎町はまだまだ眠らない。歩けなくなるほど酔った女性をおんぶして、「まだ飲むぞー!」とホストクラブが入居するビルに入っていく男女グループも。おそらく”朝ホスト”(午前6時ごろからお昼まで営業するホストクラブ。二部営業とも)でさらに飲み明かすのだろう。

果たして背負われた女性の肝臓と財布は無事なのか。彼女の今後を暗示するように、空はどんよりと曇っていた。 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
撮影/村上庄吾