学生の就職活動や転職で、近年注目を集めている「大学職員」、つまり窓口の学生対応や学生の募集、留学支援、文科省への対応など、大学の運営に携わる仕事である。「給料がよく、仕事もきつくなく、ホワイト」というのが人気の理由だが、一方で少子化によって学生の数が減り、存続の危機に瀕している大学もある。

■大学職員は「定年まで安泰」な仕事か?

そして大学職員の具体的な業務内容やキャリアも一般にはあまり知られていない。決して単なる事務員というわけではなく、高度専門的な業務を行っている人もいる。年収が1000万を超えるような人もいれば、そうでない人もいるし、残業がほとんどない大学もあれば、ブラックな労働慣行が横行している大学もある。国公立大学か私立大学かによって、そして大学の規模によっても実態は様々である。その大学職員のさまざまな実態を明らかにしているのが『大学職員のリアル-18歳人口激減で「人気職」はどうなる?』(倉部史記著、中央公論新社刊)だ。

大学職員という仕事の魅力の一つは「安定性」だろう。公務員ではないものの、一般的には大学の経営は安定しているように見える。少なくとも人気大学、入学難易度の高い大学なら「潰れることはない」と考える人も多い。

ただ、過去には早稲田大学が390億円の借入残高と年間22億円にもおよぶ支払い利息を抱えて財政危機に陥っていた例もあり、人気大学だから大丈夫、とも言えないのが現実だ。そもそも18歳人口は減り続け、今後も増える見込みはない。職場としての大学は安泰どころか、淘汰時代に直面していると言っていい。大学職員は決して「定年まで安泰」ではないのだ。

■「キャンパスで働きたい人」を待ち受けるミスマッチ

そして、労働内容も多くの人が想像するようなものばかりではない。学生時代に接したことのある大学職員は、ほとんどが「学生課」などで、学生への対応に従事する職員ばかりだったはず。しかし、大学職員は学生と接する仕事だけではなく、一般企業と同じように、経理部や総務部、人事部もある。

教務や学生支援、就職支援など主に学生と接する部門は「教学部門」と呼ばれ、経理や総務など学校法人全体の経営を担当する部門は「法人部門」と呼ばれる。「キャンパスで働きたい」「学生と接する仕事がいい」といった動機で大学職員になったものの、配属先が法人部門で「こんなはずじゃなかった」となるケースは珍しくない。

また、学校法人によっては大学だけでなく付属の高校や中学、小学校や幼稚園を経営しているため、大学で働きたかったのに、配属先は小学校だった、というケースもありえるという。

人気を集める一方で「つぶしがきかない」「成長している実感が持ちにくい」という声も聞かれる大学職員。もしこの仕事を志すなら、どのようなキャリアパスがありえるのかも知っておいた方がいい。

元大学職員の著者がこの仕事の全貌を語る本書。就職活動で大学を受験する人は必読の一冊だ。

(新刊JP編集部)