バルセロニスタは敗北を察知する能力に長ける一方で、勝利に興奮しやすい気質の持ち主でもある。

 チャンピオンズリーグ(CL)でのさらなる上位進出を夢見て、ラ・リーガではアトレティコ・マドリーを下し(3−0)、首位のレアル・マドリーを追走している。ナポリ戦(CLのラウンド16第2レグ)の勝利(3−1)は、フィクションとノスタルジー、過去と未来の狭間に揺れ、モンジュイックの丘以外に現在を見出すことができなかったクラブに希望をもたらし、カタルシスへと誘った。

 シャビにとってもそれは同様だ。2021年11月の就任以来、積み重ねてきた成果を最大限にアピールするためのタイムリミットが6月30日に設定されている中、勢いをつける勝利となった。

 このシーズン終盤、ラ・リーガ、CLいずれのコンペティションでもビッグカードが目白押しだ。CL準々決勝ではパリ・サンジェルマン監督のルイス・エンリケが待ち構え、決勝まで駒を進めることができれば、ジョゼップ・グアルディオラが率いるマンチェスター・シティと対戦する可能性がある。一方、ラ・リーガでは、マドリーとジローナとの直接対決を残している。
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 ただアトレティコ戦でのシャビの振る舞いは、会心の勝利を収めたチームとは対照的だった。ことあるごとに身振りで抗議し、終盤、立て続けにイエローカードを受けて退場処分となった。指揮官は審判とバチバチやり合い、記者会見場で怒りを露にした。

 翻ってそのアトレティコ戦でも活躍を見せたパウ・クバルシ、エクトル・フォルト、フェルミン・ロペス、ラミネ・ヤマル、マルク・カサードといった若手の台頭はシャビの功績であり、ペドリとフレンキー・デ・ヨングを故障で欠く中、チームの巻き返しに繋がっている。

 カンテラ、スコア、得点力を前面に押し出した最近のバルサの戦い方は、自陣と敵陣のゴール前の攻防を支配してラ・リーガとスーペルコパ・デ・エスパーニャの2冠を達成した昨シーズンを想起させる。
 
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 時には攻め急いだり、時にはゆっくりボールを回しすぎたり、試合運びはまだ拙い面はあるが、チームは批判を糧に団結力を高め、苦しむことを覚えた。チームの周辺には今なお一触即発の空気が漂い、特定のポジションでは駒不足に悩まされている。

 そのような状況下では、内容は二の次になっている感があり、1つ1つの試合を決勝戦の意気込みで戦うメンタリティが功を奏している。合言葉は、擁護派に報い、懐疑派を見返すこと。シャビのフライング退任表明という事態を引き起こした周囲の雑音を追い払おうとみんなで躍起になっている。
 
 その効果はてき面で、前述の発表以来、バルサは負け知らず。ラ・リーガは最終節まで、CLはウェンブリーで決勝戦が開催されるまで、このまま連勝街道を突き進む覚悟だ。

 いまシャビ・バルサに求められているのは、繊細さよりも豪胆さだ。

文●ラモン・ベサ(エル・パイス紙バルセロナ番)
翻訳●下村正幸


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