ああ、しくじった...。

 パリ五輪の出場を決めたイラク戦。僕はバックスタンド側でカメラを構えていた。普通なら、メインスタンド側にいるのがベター。セオリー。でも、イラク戦では“あえて”バックスタンドに行った。

 理由はある。中国戦の松木、UAE戦の川﨑、カタール戦の山田、細谷、内野。準決勝までの7点中、5点でスコアラーたちは得点後、バックスタンド側に歓喜のラン。

 これはもう、そういうことなのだろう。今大会はバックスタンドだ、と確信した。パリ行きの切符が懸かる大一番。ゴールシーンも大事だけど、得点を決めた選手たちの喜ぶ姿をベストなポジションで撮りたい。悩みに悩んで、バックスタンドでスタンバイしていた。

 結果は――イラク戦の前半に見事なゴールを決めた細谷も荒木も、メインスタンドに走っていった。ベンチメンバーたちとも抱擁する姿を、遠くから眺めるしかなかった...。

 幸いにも、ゴールシーンはしっかりと撮影できた。でも最大のミッションは果たせず。プレスルームでいじけていると、ミックスゾーンでの取材から戻ってきた同行の記者が、細谷のコメントを教えてくれた。

『チーム全体で、(ゴールを)決めたらベンチに行こうっていうのがあったので、ちょうど、こっち側だったので、行けて良かったです』

 なるほど、そういうことだったのか。先に教えてよ、と思わなくもなかったけど(思っていない)、勝手に賭けに出て、それに負けた僕も、なんだか救われた気分になった。
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 開催地カタールで4月8日から活動を続けている大岩ジャパン。五輪出場決定までの道のりは決して楽なものではなかったけど、選手たちは逞しく戦っていたし、結束力も日に日に高まっているように感じた。

 チーム一丸。一枚岩。団結。誰かが誰かのために。思いを一つにして、みんなが同じ方向を向いて、駆け抜けている。

「点決めたら、みんなでベンチに行こうぜ!」

 試合前にそんな風に話していたのだろうか。それを想像するだけでも、思わず顔がにやけてしまう。大岩ジャパン、良いチームです。

 さて、ウズベキスタンとの決勝戦は、どっちに行こうかな。

取材・文・写真●金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

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