仙台市青葉区に整備された放射光施設「ナノテラス」で、9日から民間企業による利用が始まりました。地元企業などが自社の製品を持ち込みさっそく研究をスタートさせました。
そもそも「ナノテラス」とは
次世代放射光施設「ナノテラス」とはどのような施設なのでしょうか。建物は、直径およそ170メートルのドーナツ型が特徴です。
なぜドーナツ型をしているのかというと、建物の中では、電子が光と同じような速さで回転。電子が方向を変える際、太陽の10億倍の明るさを持つ、「放射光」と呼ばれるX線を発生させます。このX線で、物質を1メートルの10億分の1というナノレベルで観察できる世界最高水準の研究施設です。
国内には兵庫や愛知などに9つの放射光施設があり、これまで低燃費タイヤや車に使う燃料電池などの開発で利用されました。また、歯の構造を分析して虫歯の予防効果があるガムを開発した事例もあります。
アイリスオーヤマの挑戦
国内10か所目、東北では初となる放射光施設で、生活用品大手のアイリスオーヤマは、パックご飯の分析で施設を活用しようとしています。
普段の食卓はもちろん、非常用食品としてもニーズが高いパックご飯。放射光で分析することで何が変わるのでしょうか?
アイリスオーヤマ応用研究部 藤村洋さん:
「炊く途中のメカニズムも放射光で測定・解析して、よりおいしいご飯を提供できるように研究したい」
炊きあがったご飯をナノテラスの強力なX線で観察することで、コメの内部構造やデンプンの状態などを分析。これまで主に感覚に頼ってきた「うま味」や「甘み」などをデータ化・可視化できるようになると期待されています。
アイリスオーヤマでは、試行錯誤を繰り返しよりおいしい炊き方を研究すると話します。
アイリスオーヤマ応用研究部 藤村洋さん:
「コメの表面のうま味の層といったところはまだまだチャレンジできる余地があるので、炊飯器で炊いたご飯をこえるような美味しさが、放射光を活用することで実現できればと」
ナノテラスの仕組みとメリット
ナノテラスでは、民間企業や研究機関が1口5000万円の加入金で、10年間、施設を利用することができます。アイリスオーヤマは4月中に、施設の利用を開始する予定です。
アイリスオーヤマ応用研究部 藤村洋さん:
「近場にあるということですぐに(データを)とりに行ける環境があるのはありがたい。地元に還元できるような研究・開発をするのが使命だと思っている」
アイリスオーヤマでは今後、パックご飯以外にもマスクなどに使われる不織布やプラスチック製品に使う樹脂などの分析を予定しています。
ナノテラスについてはこれまで、食品や製薬会社、通信、タイヤメーカーなど150の会社や機関が参加を表明しています。仙台の研究施設で私たちの生活を便利にする世界的な製品開発が進むと期待されています。