コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、若林稔弥さんの漫画「俺達に女はいらない」。同作は週刊少年マガジンで連載され、2017年にはアニメもされた「徒然チルドレン」に収録されている一話。X(旧Twitter)上に投稿したところ、2.1万以上の“いいね”がつく反響が集まり話題を呼んだ。この記事では、作者の若林さんにインタビューを行い本作の制作秘話を伺った。

■親友とデート、まさかのダブルブッキング

「明日一緒に映画観にいきませんか…!?」ある日突然、女子生徒に呼び出された男子生徒・山根は「んぇっ!?ぼ、ぼぼぼ僕と!?」と驚きを隠せない。「映画が好きって聞いたのでもし良かったら…」と健気な言葉に、「べ…別にいいけど?」と返す山根。すると女の子は嬉しそうな表情を浮かべ、「じゃあ明日映画館で…!!」と言って去っていった。

しかし女生徒を見送った山根は、「ぶほおおおおおおお!!何が『別にいいけど』だ。『よろしくお願いします』だろこのブ男が!!!」ととっさに取った自分のリアクションを思い出して自己嫌悪。“自分はブ男”という前提に立って「明日は他にも誰か来る」など、調子にならないよう自分を抑制していく。

そんな山根に「山根殿ー!!テストどうでありましたかー!?」と話しかけてきたのは、坊主頭にメガネが特徴的なクラスメイト・本山だった。山根がテストの結果について誤魔化すと、「さては明日のことを考えてたでありますな!?」と直前のやり取りを見ていたようなことを言う本山。動揺した山根に、本山は「明日は我輩と映画を見に行く予定でしょう?」「実は我輩も楽しみでテストどころではなかったでありますよ!!」と嬉しそうな笑顔を浮かべる。

大事な友達との約束か、女の子との約束か…。決断を迫られる山根と本山のやり取りに、読者からは「本山くんいいやつ…」「この作品屈指の漢・本山くん」「友を想う心は爽やかイケメンであります…」「もとやまくぅん!!」など多くの反響が寄せられた。

■「青春のやり直し」のような本作に込められた思い

――本作を創作したきっかけや理由があればお教えください。

本作は拙著『徒然チルドレン』の中で描いたエピソードの一つです。『徒然チルドレン』は基本的にラブコメですが、この話では友情をメインに描いてみたかったんですね。

ラブコメばかりだと僕が飽きるので。笑

――本作を描くうえでこだわった点や、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。

本山君のキャラクターですね。このキャラは、僕の高校時代にいた本山君という友達を思い出しながら描いていました。ただ、描いてみたら全然違う人間になっていて、元々の彼はこんな極端なオタクじゃありませんし、女の子を目の敵にはしていません。そういうキャラになったのは、僕の悪ふざけです。友達と同じ名前をつけたキャラをいじって遊ぶっていう、身内ノリで描いてますね。笑

だからか知りませんけど、このキャラに対しては僕も思い入れが強くて、読者にとっても人気のキャラになったと思います。本当の友達のように、生きたキャラとして描いていました。

――二人の掛け合いが痛快な同作ですが、“テンポよい会話”を作るために気を付けていることはありますか。

技術的なことを言うと、文字数の制限ですね。この頃は、吹き出し1つにつき8文字×2行=16文字を最大文字数に設定しています。コマによっては6文字×3行=18文字のときもあったかな。

その文字数が、ぱっと見で視認できる文字組だと思ったので、徹底していました。それ以上の文字数を入れるときは、もはや読まなくていい台詞として描いていますね。

文字数を統一すると、1コマあたりの読解時間が一定になるので、そういう意味でテンポが良くなったのかなと。

――本山君があれほど女子を目の敵にするようになったエピソードはあるのでしょうか。

漫画の中で特に描いてるわけじゃなかったと思いますが、一応考えてるものはあります。ただ彼の場合、たしかに女子からキモがられたりした経験はあるものの、恨み自体は些細なもので、男子同士の連帯のための口実として言ってるだけです。

それはそれで面倒くさいのですが、そんな彼が成長していく様子もその後のエピソードで描いています。

――本山君と山根君の普段の過ごし方を教えてください。

アニメやゲームの話で盛り上がってるんじゃないでしょうか。一緒にコミケに行く話とかもあるので、ぜひ単行本をお読みください。

――今後の展望や目標をお教えください。

こういう青春ラブコメは描いてて楽しいのですが、『徒然チルドレン』の中で自分の引き出しは全部出し切ったような気がしています。

今後ラブコメを描くとしたら、切り口を変えて、あまり他の人が描かないようなものを描きたいですね。

――作品を楽しみにしている読者へメッセージをお願いします。

『徒然チルドレン』は全12巻で完結していて、いろんなキャラの青春を描いています。特に山根君と本山君、そして栗原さんも、物語の中で成長していきます。

この漫画は僕にとって「青春のやり直し」みたいな漫画なので、読者のみなさんにも青春を味わっていただけたら嬉しいです。