ステレンボッシュと国枝調教師(右)
ステレンボッシュと国枝調教師(右)

[GⅠ桜花賞=2024年4月7日(日曜)3歳牝、阪神競馬場・芝外1600メートル]

 満開に咲き誇った桜のもとで行われた牝馬クラシック第1冠、第84回桜花賞(7日=阪神芝外1600メートル)は、モレイラ騎乗の2番人気ステレンボッシュ(国枝)が差し切り勝ち。3着までが0秒1差は接戦の部類だが、レース後の陣営の話を聞けば、もはや2冠濃厚ムードに思えてくる。過去牝馬3冠を2度もやってのけた信頼に足る〝証言者〟が、同等の能力を認めているからだ。

 前日の阪神牝馬S(マスクトディーヴァ)を勝った時も淡々とした様子だったが、この日も感情を爆発させることはなし。レースの中でこそエナジーを炸裂させる。それがマジックマン・モレイラだ。「パドックでまたがっていい雰囲気だったし、レースでもスムーズに運べた。初めて乗って能力の高い馬だと思いました」とファーストコンタクトでポテンシャルを感じ取ったモレイラ。「スタートはあまり良くなかったので、その後リズム重視で運ぶか、内で壁をつくって運ぶかの2つの選択があった。リズムの方を選択し、結果的に前走で負けた馬も有力馬も周りにいていい位置になった」と、勝負の分かれ道でサラッと〝正解〟を選ぶのだからさすがだ。

 国枝調教師は「いい馬なので、(強さを)証明できて良かった。パドックで多少気持ちが高ぶっていたけど問題なかった。偶数の後入れだったのも良かった。スタートも五分に出てくれたし、あとはうまく外に出してくれればと思って見ていた。これぐらいは走れると思っていた」と期待値通りの戴冠であることを淡々とした表情で語り、「前走は内にモタれるところがあったけど、今日はスムーズだった。ジョッキーも乗りやすかったみたいだね。調教でもレースでも落ち着いて運べたのが良かった」と、長めの栗東滞在で体調良く挑めたことを勝因のひとつに挙げた。

 誰もが気になるのは2冠目となるオークス(5月19日=東京芝2400メートル)へ向けての手応えだ。この点についてモレイラは「この馬の良さは、瞬発力の高さと、トップスピードを保てるところ」と語り、「道中はリラックスして走れていたし、距離が延びるのはいいと思う。1800〜2000メートルは全然問題ないし、それ以上の距離についてはやってみないと何とも言えないところはあるけど問題ないと思っている」と締めくくった。国枝調教師も「落ち着きのある馬だし、馬体からも2400メートルも全く問題ないと思っている。このままトラブルなくいってくれれば」とこちらも前向きだった。

 何より強調できるのはアパパネ、アーモンドアイと過去に牝馬3冠馬2頭を管理していた国枝調教師に「2頭と比べても同等のモノを持っている」と言わしめたところ。果たして、これ以上説得力のある言葉があるだろうか? 5月19日の府中に向けて、道は極めてクリアに開けている。

著者:芝井 淳司