大規模災害時の帰宅困難者を受け入れる一時滞在施設において、川崎市は民間の指定を増やしている。鉄道利用者や周辺人口が多い主要駅を中心に拡大。今年度中に改定が予定されている「エリア防災計画」の中で、民間施設との連携を模索する。

大地震により鉄道などの公共交通機関が止まり、行きどころのない人を一時的に受け入れる帰宅困難者一時滞在施設。川崎市は、川崎、武蔵小杉、溝口などの主要駅周辺を中心に、現在61カ所を指定している(今年5月1日時点)。

災害時の帰宅困難者は市内で約3万8000人(平日15時)と推定され、公共施設だけでは不十分とし、市は民間施設に協力を依頼。ここ3年余りで新たに8カ所増やし、民間施設は全体の4割を超える。

溝口駅周辺でも拡充

施設の指定は、各区役所危機管理担当が管轄。川崎駅周辺では大型商業施設やホテルなど12カ所を確保。溝口駅周辺でも学校や企業の協力を得て、5年間で7カ所増の17カ所に拡大した。エリア防災計画の策定から7年が経つ武蔵小杉駅周辺は、鉄道利用者や住宅環境の変化に伴い、帰宅困難者が現計画の約5800人から増加すると予測。台風で被災した市民ミュージアムの代替施設を含め、新たな候補として商業施設等に協力を求める。2路線が乗り入れる登戸駅周辺でも、多摩市民館に加え民間施設を今年新たに指定した。

安全や警備面が課題

一時滞在施設には、食料や飲料水など物資の備蓄や無線機の配備、水道水やトイレの提供などが求められる。一方で、民間側にとっては建物内が被災する懸念や、従業員の安全確保、警備上の問題など運用面の課題もあり、協力には慎重な判断を要する。市危機管理本部の担当者は「引き続き協力を仰いでいく。あらゆる想定をしておく必要がある」と話す。

帰宅困難者対策では企業や学校の対応も鍵を握る。市は社内待機などの対策を事業者にウェブサイトや出張講習などで啓発。市外へ通学する児童や生徒が多いことも踏まえ、「学校や家庭にも周知を図る」としている。