例えばA君の仕事観は、「仕事とは、お金を稼ぐための手段でしかない」だとします。このような仕事観では、内発的に動機付けられる要素が低く、また外発的に会社からさまざまな施策でアプローチしようとしても、おそらくあまり響かないでしょう。

一方、B君の仕事観は、「仕事とは、誰かの役に立ち、自分自身も成長することができる尊いもの」だとしたらどうでしょう。仕事や職場で起きるさまざまなことを前向きに捉え、仕事へ建設的に取り組めるという内発的動機づけが容易になります。

社員の「仕事観」を確認するとどうなるか

A君のような仕事観を持っている社員が多いと、会社がさまざまな施策を講じても、従業員エンゲージメントは向上しません。また、そもそも自分の仕事観を持っていない社員が多いという実態もあります。

仕事に対するマインドを建設的にセットし、社員の仕事観を確認していくことが、エンゲージメント向上の土台になっていきます。例えば、離職率が10%台と人材定着に苦労していたある設備工事業の会社は、こうした取り組みを行った結果、離職率1%台まで改善できました。

コロナ禍以降、経営・組織・人事といったカテゴリーでよく使われるようになったキーワードに、「パーパス」という言葉があります。日本語の直訳では、「存在意義」という意味ですが、理念やミッションという言葉が近いでしょう。

エンゲージメントを考えるうえでも、パーパスの存在は根幹となる部分だといえます。従業員は会社という船に乗り込み、航海をすることになります。その船(会社)がどんな理由で、どんな目的地を目指して航海を進めていくのか。そのために大切な価値観や、船員(従業員)に必要な行動は何なのか?これらが明確に示され、浸透させることができないと、エンゲージメントは向上しません。