円安を問題にする論者は、「通貨安=国益低下」という信条を持っているか、あるいは長年のデフレに適応して現預金を蓄積したため通貨価値が減ることに我慢がならないのかもしれない。実際には、日本経済でインフレが定着しつつある中で、インフレ期待の高まりが通貨安を後押ししているとみられ、そうであればむしろ好ましい事象だろう。

日銀は3月19日にマイナス金利解除に踏み出したものの、現時点では政策変更は円高をもたらしていない。正直、これは筆者にとって予想外の展開ではあるが、日本経済や日本株にとっては望ましい。円高を招かずにインフレ期待の高まりに応じて金融緩和を緩める日銀の対応はこれまではうまくいっており、それがゆえに日本株の好調が続いている。

今後も日本株は米国株よりも上昇できるのか?

それでは、円安が続き、日本株が米国株などを上昇率で凌駕する状況は、2024年末まで続くだろうか。筆者は、以下の2つの理由から、最近やや懐疑的になっている。

1つは、マイナス金利を解除した日銀による次の引き締めが、早期に行われる可能性が高まっているためだ。日銀がやや「前のめり」に金融緩和を緩めた背景には、円安を必要以上に問題視していることがあげられる。

日銀の植田和男総裁は4月5日の朝日新聞のインタビューで、「為替の動向が、賃金と物価の影響に無視できない影響を与えそうだということになれば、金融政策として対応する理由になります」と、為替市場に配慮する考えを示した。3月の時点でマイナス金利解除に踏み出したのは、「円安に歯止めをかけたい」というのが理由だった疑いがある。