しかし、現在ではGoogleや他のプラットフォームがそうであるように、過去と比べてかなり慎重に審査が必要だ。また、Facebookのようなソーシャルメディアプラットフォームは、広告を通じて収益を上げるビジネスモデルがメインだ。

だからあくまでMata社に限らずに一般論でいえば、短期の収益を追えば、やや審査が手薄になる可能性がある。このモデルは適切なフィルタリングや監視の欠如が原因で、詐欺的広告が流通するリスクがある。

「詐欺広告は避けられない」と暗に言っていいのか

ところで、指摘するまでもないが、同社が今回の宣言で「世界中の膨大な数の広告を審査することには課題も伴います」「オンライン上の詐欺が今後も存在し続けるなかで、詐欺対策の進展には、産業界そして専門家や関連機関との連携による、社会全体でのアプローチが重要だと考えます」と述べたのは、当然ながら弁護士や社内部門やら、経営トップのややこしい承認を受けた果てにある、と私は予想する。

・あっさり不作為を認めると、過去の自分たちが無能で無策あると認めることになりますよ

・詐欺広告の上位をあっさりと削除できたら、自分たちが何もやっていないことがバレて、訴訟リスクがありますよ

・株主の手前、現経営陣の不手際をバラすのはやばすぎませんか

・何より、自分たちも問題はわかっていたけど、それを正直にいうのはまずいですって

などなど、さまざまな意見があったはずだ(なお、上記は私の経験からの想像)。

それは理解する。しかし、現実的にはMeta社はすぐれたAIを作っており、この程度の詐欺広告が排除できないと告白すればダメージは避けられない(「このAIは優秀ですが、しかし、森永卓郎さんの詐欺広告出稿は見抜けません」と注意書きすれば、それはそれでシュールだとは思うが)。

何よりも、消費者信頼の低下が企業イメージに悪影響を及ぼし、そのブランド価値が損なわれることは望まないだろう。このように考えれば考えるほど、今回のMetaの声明は「悪手」でしかなかったのではないかと、私には思われるのだ。

著者:坂口 孝則