「ゆきおは、上場企業に勤めていて、年収も800万円以上ある。もっと若い女性と見合いできるんじゃないですか? しかも、相手の女性はバツイチだというじゃないですか。もうガッカリですよ」

憤った声を出しながら、「ガッカリ」を何度も繰り返した。

「息子は、経歴がよくても見た目がよくないから、41歳のバツイチ女性としかお見合いができなかったのでしょうか」

上場企業に勤めていて年収もある自慢の息子が、41歳の女性とお付き合いに入っていることが、不満のようだった。

そこで、筆者は言った。

「30代の方とも何人かお見合いをしましたよ。ただ、41歳の女性が一番話しやすかったと言って、その方と交際に入っています」

電話があったことは言わないで

ゆきおのお相手のきみえ(仮名)は、男性受けする見た目ではなかったが、いつもニコニコ笑っていて、気立てがよかった。20代のときに結婚をしたが、7年前に夫が不慮の事故で亡くなった。子どもはいない。

その悲しみから時が経ち、これからの人生をともに歩いていけるパートナーを探そうと、婚活に乗り出した。

母親は、電話を切る前に言った。

「私から電話があったということは、ゆきおには伝えないでくださいね。私が電話したことがわかると、とんでもなく怒ると思うので」

筆者は、この電話のことはゆきおには伝えなかった。ただ、きみえと成婚になったとしても母親はいい顔をしないだろう。きみえにとっても、こんな過干渉な親が義母になったら苦労をする。

しかし、そんな心配は無用だった。4回目のデートで、ゆきおはきみえからあっさりと振られてしまった。

あるときの面談で、ゆきおがこんなことを言っていた。

「ウチの両親は昔から過干渉で、高校時代に兄に付き合う女性ができたときに、母がその女性を兄には内緒で呼び出して、『今やるべきことは、男女交際ではなくて勉強でしょう』みたいなことを言って、無理やり別れさせたことがありました」