兄は彼女に振られた。振られるときに、彼女から母親が会ったことを聞かされたそうだ。

「『アナタとは、付き合うな』だって。別れ際に、『今日のことは、息子には言わないでね』とも言われたわ。コソコソしていて、サイテーね」

その捨て台詞とともに振られた兄は激怒し、家に帰ってくるなり母親を怒鳴りつけた。するとそこに父が参戦し、母側について大げんかになったという。

そんな様子を見ていた中学生のゆきおは、“女性と付き合うと面倒なことになる”と思ったそうだ。そして、女性と付き合うことがないまま学生時代を終えて、社会に出た。

入会面談のときに、ゆきおが言っていた。

「これまで女性と2人きりで食事をしたことは、片手でも数えられる程度です。彼女がいない歴イコール年齢なんですが、こんな自分でもうまくいくでしょうか?」

そんな不安もあったのだが、お見合いは順調に組めていた。

いつくかのお見合いを経てきみえと交際に入り、「一緒にいると自然体でいられる」と言っていた。いい関係を築いているときに、母親から筆者に電話が入った。

知らぬ間に身についた「性格」

どういう経緯できみえとの交際を母親が知ったのかはわからないが、きみえの年齢とバツイチという経歴が気に入らなく、いてもたってもいられず電話をかけてきたのだろう。そして、切る間際に母親は筆者に言った。

「私から電話があったということは、ゆきおには伝えないでくださいね」

親の勝手な判断で裏から立ち回り、子どもにはわからぬように恋愛や結婚を潰していく。

その後、ゆきおは30代にばかりお申し込みをかけるようになった。母親から結婚する女性の年齢について、何か言われたのかもしれない。

親の支配のもとで成長したゆきおは、40代後半になっても、親の顔色をどこかでうかがう性質が、知らぬ間に身についてしまったのだろう。