アメリカは、半年ほどの議会の混乱の末、4月24日に約610億ドル(日本円で約9兆4000億円)のウクライナ支援予算を可決し、砲弾や兵器の供与が再開された。
ウクライナ軍は戦線を立て直し、主導権を取り戻すことができるのかが注目される。
一方、ロシア国内ではウクライナ侵攻のキーマンであるショイグ国防相の側近の国防次官が逮捕された。ロシアの権力中枢で、いま何が起きているのか?
1)イワノフ国防次官逮捕 ショイグ国防相の影響力低下?
4月23日、ウクライナ侵攻を担うロシアのイワノフ国防次官が、国防省が発注した契約で多額の賄賂を受け取った疑いで勤務中に逮捕された。
「賄賂を受け取った疑い」とされるが、実は「反逆罪」の疑いから逮捕されたとも報じられている。
ロシア独立系メディアは、FSB(ロシア連邦保安庁)に近い情報源の見解として「賄賂は国民への口実だ。国家反逆罪は大スキャンダルなので、まだ公にはしたがらないようだ。」「汚職の罪で彼を拘束する人は誰もいなかっただろう。クレムリンの誰もがずっと前から彼の汚職を知っていた。プーチン大統領はこれが「反逆事件」だと確信して初めて命令を出した」と報じた。
逮捕されたイワノフ国防次官は、ショイグ国防相が2012年にモスクワ州知事に就任した当時からの側近で、最も近い人物の一人だとされる。
アメリカのコーネル大学の歴史学者シルビー准教授は、「ショイグ国防相が次に逮捕されたり、あるいは突然引退したりしても驚かない。強力であればあるほど、独裁者にとっては存亡の脅威となる」と、真の狙いはショイグ国防相だと指摘している。
イワノフ国防次官の逮捕について、駒木明義氏(朝日新聞論説委員、元モスクワ支局長)は、次のように述べる。
今回、逮捕に踏み切ったのは何らかの権力闘争があると思われる。ショイグもイワノフも、もともと軍人ではない。ショイグが国防相になって、政敵に囲まれる中で信頼のおける副官として連れてきた人物がイワノフであり、本当の腹心として庇護を与えてきたからイワノフは自由に行動できた。しかし、今回の立件はその庇護が役に立たない状況になっているということであり、ショイグ国防相はすでに大きなダメージを受けていると言っていい。おそらくこの立件の本丸はショイグ国防相ではないかと思う。
駒木氏は、プーチン大統領とショイグ国防相の関係について次のように分析した。