幼いころ、神様への願いごとで「ほお袋」を手に入れた少女。特に役立つわけでもないおまけのような特徴は、人生を左右する冒険の入り口だった――!?

フィビ鳥(@fibi_dori)さんの創作漫画「ハムガールの冒険」は、ハムスターのようなほお袋を持つ少女の半生を辿る短編作品。ほかの人にはないほお袋を持て余す主人公と、そこに価値を見出してくれた恋人との出会いを描く……と思いきや、2人目の恋人はまさかの反政府組織の一員。読者の予想をことごとく裏切るジェットコースターのような展開と、主人公の数奇な運命に、X上で9万件を超えるいいねが寄せられた作品だ。

読者から「すごいとしか言えない」「長い夢を見たときに似ている」「どこまでも不思議なお話」と大きな反響を呼んだ同作。少年ジャンプ+で読切「嘘つき大工と神様の木」を発表するなど精力的な作品発表を続ける作者のフィビ鳥さんにインタビューを行い、作品の着想や漫画制作でのこだわりについて語ってもらった。


――「ハムガールの冒険」のタイトルと冒頭部分からは予測できない二転三転するストーリーです。タイトルも含めて、本作の着想はどこから得たのでしょうか?

【フィビ鳥】普段から思いついたことをメモアプリにメモしているのですが、見返していたら「ほお袋のある女」という言葉があり、そこから漫画に起こしました。

――読者からも「目まぐるしい展開」という声がありましたが、一方で、つむぎの半生と出会った人たちという線で一本で辿れる物語でもあり、不思議な読後感です。本作の構成やストーリー展開はどのように作られていったのでしょうか?

【フィビ鳥】「ほお袋のある女」というキーワードから自由に連想して、出てきたエピソードをつなげました。並べると脈絡みたいなものが見えてきたので、あとはそれに沿ってエピソードを足して、一本の物語にしました。

――また、「嘘つき大工と神様の木」のように線の描き込みや陰影の淡いを感じる画風でも描かれる中、本作では明暗がはっきりしてシンプルな画で表現されています。こうした形で描かれた狙いや、作画で意識したポイントを教えてください。

【フィビ鳥】身構えず気軽に読んでほしかったので、絵柄を軽くしました。現代ものの漫画を描くときは、軽めの絵柄を選ぶことが多いです。

――本作で挑戦した試みや、普段とは違うアプローチ・技法を用いたという点があれば教えてください。

【フィビ鳥】横長のコマを多めに使いました。今まで使い方がわかっていなかったんですが、長台詞のときとか、メリハリをつけたいとき役立つことに気づきました。話の内容がごちゃごちゃしているので、重宝するコマ割りでした。

取材協力:フィビ鳥(@fibi_dori)