やっぱり上級ミニバンはもはや消滅したV6エンジンだろ! たとえ燃費が悪くてもHVや直4じゃ味わえない魅力を知ってくれ

この記事をまとめると

■かつてV6エンジンを搭載したミニバンが数多く存在していた

■ミニバンブームのころはガソリン代が安かったのでハイパワー車も選びやすかった

■ガソリン価格の高騰やHVの普及で多気筒エンジンは淘汰されていった

一時期ミニバン界にはV6エンジンが溢れていた

 ホンダが提唱するクリエイティブムーバーの第一弾として1994年にデビューしたホンダ・オデッセイは、日本の自動車文化に一石を投じた、ファミリーカーの概念を変える多人数乗用車=ミニバンだった。そんな2023年12月に5代目の一部改良モデルとして復活したオデッセイは、初代から2代目で直4エンジンに加え、上級グレードとしてV6エンジンが用意されていたのも特徴であった。

 現在、V6エンジンを搭載する乗用ミニバンは日産エルグランドぐらいのもので、あのオデッセイでさえ、5代目一部改良モデル(アブソルートのみ)はハイスペックな直4エンジンのみの設定になっている。トヨタ・アルファードを筆頭とする現在のミニバンの主流は直4エンジンとそれにモーターを組み合わせた燃費性能にも優れるハイブリッドであり、V6エンジン、大排気量エンジン搭載ミニバンは絶滅危惧種となっているのだ。

 ここでV6エンジンについて説明すると、ふたつの3気筒エンジンをV字型に組み合わせているのが特徴で、多気筒エンジンとしてはコンパクトに作ることができ、高出力化が可能で、トルクの太さや振動の少なさ、スムースな回転フィールといった特徴を持っている。

 あの日産GT-R、フェアレディZ、ホンダNSXからマセラティ・ギブリ、ランドローバー・レンジローバーなどがV6エンジンを採用していることからも、スムースさでは直6エンジンに譲るものの、そのパフォーマンスの高さが実証されているではないか。

 初代オデッセイが登場した1990年当時のミニバンにはまだハイブリッドがなく、直4エンジンとV6エンジンの2種類のパワーユニットのみが存在した。ハイブリッドミニバンが華々しく登場したのは2003年の初代アルファードの追加モデルからだと記憶する。

 その頃、4気筒に対して6気筒となるV6エンジンはまさに高級車の証といえる存在であり、高性能な走りを実現した国産車のパワーウォーズの先兵でもあったのだ。それは国産ミニバンにも反映され、上記のホンダ・オデッセイ プレステージ/アブソルートV6(アブソルートは2代目で登場)はもちろん、トヨタ・エスティマにも3リッターV6・280馬力、ホンダ・エリシオン プレステージにはレジェンド(国産車初の300馬力越え!!)と同じ3.5リッターV6、ミニバン初の300馬力を達成したエンジン搭載車が存在した。

直4エンジンにはない魅力が詰まっている!

 この時代のホンダV6エンジンは、実用型とはいえとにかく気持ちいいパワーの出方、回転フィールが素晴らしく、じつは筆者も2代目ホンダ・オデッセイ アブソルートV6(2002年型)を10年を超えて所有。乗り味は当時のメルセデス・ベンツにも匹敵するほどの質の高さと、ローダウンサスペンションと17インチタイヤによるスポーティカーのような操縦安定性を示してくれたものだった。長きに渡って手放さなかったのも、そうしたミニバンとしての完成度の高さからである。

 オデッセイが3代目になったとき、所有していたお気に入りの2代目から3代目への買い換えをしなかった理由も、低全高パッケージに加え、お気に入りのV6エンジンが消滅したからでもあったのだ。

 とくに1990年代から2000年代にかけては空前のミニバンブームであり、「なにはともあれ、ミニバンを買っておこう」という空気が充満し、街に、郊外に、観光地に、オデッセイやステップワゴンといったミニバンが溢れていた。そこで、ミニバンの生活臭を吹き飛ばす高性能V6エンジン搭載の上級グレードが、ボクを含め、一部のユーザー、クルマ好きにもてはやされた、ともいえる。

 しかも、いまでは高騰しているガソリン価格も、レギュラーガソリンは1999年当時、1リッター100円前後だったから、直4エンジンに対して、高性能と引き換えに燃費性能で劣るV6エンジンに乗っていても、実感としてさほど困らなかったのも本当だ。

 ただし、2008年にガソリン価格が高騰。それを見越したのか、たとえばオデッセイは2003年デビューの3代目以降、V6エンジンは消滅。直4エンジン(アブソルートはハイチューン型)のみの設定になったのだった。

 理由は燃費性能と販売比率の2点が主で、燃費重視のいまでは3代目までV6エンジンをラインアップしていたトヨタ・アルファードも、最新の4代目では直4NAエンジンとそのハイブリッドだけとなり、V6エンジンは姿を消している。

 2018年に改良されたトヨタ・アルファード&ヴェルファイアの301馬力を発揮する3.5リッターV6モデルをこのWEB CARTOPで試乗したときのリポートは以下の通りだ(V6エンジンに関する記述のみ抜粋)。
「ヴェルファイアの3.5リッターV6モデルでもっともスポーティーといえるエグゼクティブパワーシート仕様、18インチタイヤをおごるZGを走らせれば、まずは新エンジンのジェントルに発揮される大トルク、ゆとり極まるパワーが神々しい。アクセル操作に対してレスポンスは穏やかで、一瞬のタメがあってから力強く、しかし8速ATがもたらすウルトラスムースな変速による加速態勢に入るセッティングなのは、なるほどVIPが好んで選ぶグレード=エグゼクティブラウンジにも搭載されるエンジンだからだろう。アイドリング時には2.5リッター直4のHVより少々振動を多めに伝える新V6エンジンは、先を急ぐためアクセルを深々と踏み込んで高回転までまわしても、耳に届くのは豪快ではあるものの、低音が強調された耳障りとは無縁のサウンドだ。頼もしさと上質さの見事なバランスといっていいだろう」

 とはいえ、ミニバンのような重量級のクルマ、多人数乗用車にとって、トルキーで気もちよくまわるV6エンジン搭載車は(本家、アメリカのミニバンしかり)、大空間高級サルーンとして見れば、直4エンジン搭載車にない魅力を持っていることは確か。

 筆者が所有していた2002年型ホンダ・オデッセイ アブソルートV6のJ30A型3リッターV6エンジン、ホンダ謹製ユニットのミニバン搭載エンジンらしからぬ、ウルトラスムースな回転上昇感、気もちよさは、いまでも忘れられないほどである。