トラックの高速道路の最高速度を90km/hに引き上げ……ってホントに効果ある? 物流業界関係者からは疑問の声も噴出!

この記事をまとめると

■2024年4月よりトラックの高速道路での最高速度が引き上げられた

■トラックの高速道路での最高速度が引き上げは休息時間の確保や労働時間短縮に効果があるとされている

■規制緩和の効果を疑問視する声も多い

衝突被害軽減ブレーキが義務化されたのは2014年

 日本では大型トラックの高速道路における最高速度が80km/hに制限されている。現在は90km/hで作動するスピードリミッターの装着が義務付けられているのは多くのドライバーがご存じだろう。

 そのため、高速道路上では時速にして数キロの差でトラック同士が追い越しをするためにふたつの車線を長い時間塞いでしまう状況に、乗用車のドライバーのなかにはイライラしている人も多いようだ。

 かつて、大型トラックの最高速度は1963年以来、80km/hに制限されてきた。しかしながら、実態としては、夜間は比較的軽量な荷物を満載して150km/hを超える速度で巡行するような大型トラックもいたのは事実だ(多くはしっかり制限速度内で運行しているけれども)。

 警察庁によれば、2007年までの5年間での高速道路における大型トラックの人身事故は4037件だったのに対し、2022年までの5年間では1927件と半分以下にまで削減されている。しかし、死亡事故に至る確率は、乗用車の2倍以上というデータもあり、一度事故が起これば危険という状況は変わっていない。

 そのため、大型トラックに衝突被害軽減ブレーキが2014年から義務化され、車格により順次適用された。そのタイミングは乗用車より早く、普及率も新車販売に準じて上昇している。

2024年度より最高速度が90km/hに

 物流2024年問題に対応するため、警察庁はトラックの高速道路での最高速度を一旦80km/hに下げたルールを、このほど90km/hに引き上げた。これは有識者会議により検討され、トラックメーカーからの意見も聞いた上で決定されたらしい。

 理論上は到着時間が早くなり、ドライバーの休息時間の確保や労働時間短縮に効果があるとされているが、周囲の交通状況などによっても左右されるだけに、理屈どおりにはいかないだろう。たとえ1時間走行時間が短くなったとしても、燃料費の増大やタイヤバーストの危険性なども考えると、それほど大きなメリットはないようにも思える。

 物流業界の関係者のなかには「早く到着できたとしても現状の荷待ち時間の長さから、さらに荷待ち時間が増えるだけなのでは」と、規制緩和の効果を疑問視する意見もある。

 衝突被害軽減ブレーキやドライバーモニタリング機能などの普及により、大型トラックの安全性は急速に高まっている。しかしながら、衝突被害軽減ブレーキは高速道路での効果は限定的であるから、被害は軽減させるものの「ぶつからないクルマ」ではないし、速度が上昇すれば被害は大きくなる。

 トラックメーカーによれば、現在のスピードリミッターの設定値である90km/hを前提に車両の開発を行っているため、最高速度を90km/hに引き上げても問題はない、とされたようだが、その評価には当然、安全マージンがあってのことだから、このままでは従来の安全マージンを削ったことになる。

 トラックドライバーにとっても疲労が増えるのか、負担が減るのか。実際に導入されてみないとわからないが、物流の効率化に対する効果は限定的だろう。