元日を襲った能登半島地震では、いまだ連絡が取れない「安否不明者」が1月23日14時時点で19人いる。石川県と石川県警は被災地での人命救助や復旧作業を円滑に進めるため、7日朝から、能登半島方面につながる「のと里山海道」などの一部で緊急車両以外の通行を規制した。石川県はHPで「能登方面への不要不急の移動は控えて!」とも訴える。

石川県は不要不急の能登半島への自粛を呼びかける。その意図は?(石川県のホームページ)

 被災地の安全安心を第一に考えての判断であるが、他県から来たボランティアによる物資支援や炊き出しが被災地を喜ばしているのも事実だろう。能登の人たちもこうした支援を求めてきているかもしれない。被災から3週間が経過した今、交通規制は解除すべきではないのか? 

 リスクコミュニケーションを専門とする日本大学危機管理学部の福田充教授は「時間軸と空間軸で被災状況を見て判断することが必要」と指摘する。災害をはじめとした危機対応は、発災からの時間経過と被害エリアによって異なるという。こうした視点は、今後、被災地の復興を考える時になっても必要だ。被害状況に対する危機対応を考える視点を聞いた。

災害でも重要なインテリジェンス

 今回の地震は能登半島の沖合にある150キロメートルの活断層がずれ動いたと指摘されている。発生からおおむね数分以内に珠洲市の沿岸に津波が到達していたともみられており、福田教授は「大津波警報が出る前に津波が到達してしまい、逃げ遅れてしまった人も出ている可能性もある」と指摘する。

 また、顕著な被害が起きているのが家屋倒壊で、輪島市の観光名所である輪島朝市をはじめ、火災も多く発生した。津波、家屋倒壊ともに、いまだ被害実態がわからない部分も多くなっている。「被害状況を把握した上で対応を議論しないと、食い違いが生じてしまう」と指摘する。

 災害への対応を考えるには、被災が時間の流れによって変遷することをおさえておくべきだという。それは、被災から数日、数週間にわたる「発災期」、数週間から数カ月の「復旧期」、数カ月から数年にわたる「復興期」だ。被災直後である発災期は人命救助と情報把握が最優先事項となる。今は発災期から復旧期へと変わろうとしている時期で、被災地域によって対応が異なってきているという。

 さらに、危機管理に必要な4つの対応として、福田教授はインテリジェンス、セキュリティ、ロジスティクス、リスクコミュニケーションを挙げる。発災期においては、情報把握を意味するインテリジェンスが特に重要だという。