春、新生活がスタート!中学受験へ向けて塾通いを始めた保護者の中には、お子さんから「塾へ行きたくない」と言われたらどうしようと不安を感じる人もいらっしゃることでしょう。中学受験を目指す家庭内で生じがちなお悩みやその解決法について、ベテラン受験指導家・宮本毅先生に伺いました。

子どもが塾へ行きたくないと言い出したら?

皆さんが、お子さんに中学受験の学習を始めさせたいとお考えになったきっかけは何でしょうか。

「将来の大学受験が不安だから」「私立中学の良質な学習環境を子どもに与えたい」「子どもが中学受験をやりたいと言い始めた」などなど。各ご家庭によってさまざまかと思います。

しかし、いざ始めてみると、学習内容が難しくて負担になったり、毎週塾に通うのが大変だったりと、数ヶ月もたたないうちに子どもが塾に通いたがらなくなるということは、割と「あるある」でしょう。

特にお子さんが「〇〇君が塾に行き始めたから僕も行きたい!」と言い出したので通い始めさせた場合は、「思っていたのと違う!」と想像とのギャップにやられ、塾をやめたいと言い出すケースは多いようです。

塾へ通い始め期の負担感には送迎サポートを

塾に通い始めますと、やはり最初はだれしも負担に感じるようです。

小4なら週に2回、小5なら週に3回、学校と家庭以外の場所に出かけていってそこで数時間拘束されるわけですから、肉体的にも精神的にも大きな負荷がかかります。

ですからお子さんが「塾に行きたくない」と言い始めたら、まずは励ましてください。

塾まで一緒に行ってあげるとか、帰りにお迎えに行ってあげるといったことだけでも、お子さんの心の負担感は軽くなるはずです。

二ヶ月もすると通塾のペースに身体が慣れてきてだんだん疲れなくなりますし、お友達もできて一緒に行き帰りをするようになると、「ママはもう来なくていいから」と独り立ちできる子が多いように感じます。

最初の数ヶ月だけ手厚くサポートしていただければそれで大丈夫です。

学習面の負担感は予習サポートが効果的

お子さんによっては塾の学習に負担を感じる子もいます。

小学校で習うことと中学受験の学習とでは難度に大きな差がありますし、習っていないこともたくさん出てきますので、もともとそれほどお勉強が得意でない子にとっては大変大きな負担となります。

そういうお子さんであれば、保護者は少し大変にはなりますが、塾の予習に付き合ってあげるとよいと思います。

塾で初めて習うことですとどうしても戸惑ってしまいますし、すでに塾に通っている子とのレベル差を感じて気後れし、「もう塾に行きたくない」となってしまうケースが多々あります。

しかし、学習内容をあらかじめ予習しておけば授業中に理解できず後れを取ることがなくなり、心にも余裕が生まれます。

また、家庭と塾で二回学習をしますので、より学習内容が定着しやすくなり、テストなどでの成績も上がりやすいです。

そうすると自信もついて、気持ちよく通塾できるようになるでしょう。

最初は大変かもしれませんが、学習面でのサポートを是非頑張ってみてくださいね。

子どもの適性を見極めたうえで、受験をしない決断もアリ

行き帰りに一緒に行ってあげたり、予習に付き合ってあげるなどのサポートをしてあげても気持ちが前に向かないときは、「この子に中学受験はまだ早かったのね」とすっぱり諦めてもいいと思います。

中学受験は決してゴールではありません。中学生や高校生になってから学ぶ楽しさに目覚め、そこから学力を伸ばして大学受験で実力を発揮したり、社会に貢献する人材になっていったりする人は決して少なくありません。

むしろ、時期ではないのに無理やり塾に通わせ、なかなか上がらない成績や本人の意識の低さ(それは実は年相応のことであり、特にそれ自体が問題であるわけではありません)にイライラして、ついお子さんをきつくってしまい、結果お子さんの「勉強嫌い」を助長させてしまっては、せっかく将来伸びていったかもしれない未来の可能性の芽を摘むことにもなってしまいます。

「我が子には中学受験しかない」と近視眼的にとらえるのではなく、「向いてないならほかにいくらでも道はある」と大局観をもって俯瞰して見てあげるのも、子育てには重要なことなのではないでしょうか。

早慶へ入学するなら中学受験が最も難しい

ちなみに、たとえば早稲田や慶應など私立の大学に関して言えば、中学受験で入学するのが最も難しく、大学受験で狙うのが最も楽だと私は思います。

早稲田大学の入学定員は全学部あわせて約9000人。高校の募集定員は早稲田大学高等学院・早稲田大学本庄高等学院・早稲田実業学校・早稲田高等学校・早稲田渋谷シンガポール校・早稲田摂陵高等学校・早稲田佐賀高等学校の附属校・系列校を合わせると約900人、系列中学の募集人数は約650人となっています。

この人数を見ると、わざわざ狭き門を勝ち抜かせて早稲田大学系列に入れる必要って、本当にあるのかしらと感じます。

附属校からの内部進学を狙うとなると、自分の好きな学部に行けるかどうかも高校時点での成績によって決まってしまうわけですから、もしお子さんが中学受験に前向きになれないのであれば、無理に目指させなくてもいいように感じます。

ちなみに、たとえば早稲田や慶應など私立の大学に関して言えば、中学受験で入学するのが最も難しく、大学受験で狙うのが最も楽だと私は思います。

早稲田大学の入学定員は全学部あわせて約9000人。高校の募集定員は早稲田大学高等学院・早稲田大学本庄高等学院・早稲田実業学校・早稲田高等学校・早稲田渋谷シンガポール校・早稲田摂陵高等学校・早稲田佐賀高等学校の附属校・系列校を合わせると約900人、系列中学の募集人数は約650人となっています。

この人数を見ると、わざわざ狭き門を勝ち抜かせて早稲田大学系列に入れる必要って、本当にあるのかしらと感じます。

附属校からの内部進学を狙うとなると、自分の好きな学部に行けるかどうかも高校時点での成績によって決まってしまうわけですから、もしお子さんが中学受験に前向きになれないのであれば、無理に目指させなくてもいいように感じます。

まとめ

中学受験塾への通塾をスタートさせた時に、家庭内で生じがちなお悩みや、その解決法についてお話ししてみました。

塾で新学年のカリキュラムが始まるのは、現6年生の入試が終わった2月から。

「この絶好のタイミングで」と通塾を考えるお気持ちもよく分かりますが、保護者の皆さまには、ぜひ中学受験の熱に浮かされることなく、冷静にご判断いただくことを強くおススメしたいです。

今回の記事が、親子にとって、よりベストな選択をするためのヒントになれば嬉しく思います。

※中学受験ナビの連載『低学年のための中学受験レッスン』の記事を、マイナビ子育て編集部が再編集のうえで掲載しています。元の記事はコチラ。

https://katekyo.mynavi.jp/juken

宮本毅
宮本毅
首都圏の大手進学塾で最上位クラスを担当した後、2006年に独立し、東京・吉祥寺に中学受験専門の「アテナ進学ゼミ」を設立。科目間にある垣根は取り払うべきという信念のもと、たった一人で算数・国語・理科・社会の全科目を指導している。『はじめての中学受験 これだけは知っておきたい12の常識』(ディスカヴァー・トゥエンティーワン)『中学受験 同音異義語・対義語・類義語300』(中経出版)など、著書多数。
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