4年にわたるコロナ禍や円高などによる物価上昇は、どんな人にとっても大なり小なりの影響を及ぼしています。中でもひとり親の家庭にとっては死活問題とも言える重要な問題でしょう。今回は、NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンが実施した「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」をもとに、その厳しい現実を見ていきます。

ひとり親世帯2,391名が回答

認定NPO法人グッドネーバーズ・ジャパンは、2017年より日本国内の子どもの貧困対策事業として、低所得のひとり親家庭への食品支援事業「グッドごはん」を運営し、ひとり親家庭への食品配付などを行っている団体です。この「グッドごはん」を利用するひとり親家庭を対象に、前年の収入を把握するために毎年、アンケート調査を実施しています。今回は、2,391名から2023年の収入や物価上昇の影響などについて回答を得ました。なお、回答者の男女比は女性2,302人に対し男性53人と、女性がほとんどを占めています。

自身の年収、4人に1人が100万円未満

回答者のみの2023年の年収(手取り)を聞いた設問では、最も多かった回答が「100万円以上200万円未満」で43.4%、次いで「1円以上100万円未満」25.1%でした。ひとり親世帯のうち、就労による収入の低い世帯が多くを占めていることがわかります。さらに、4人に1人が年収100万円未満という厳しい現状がうかがえる結果です。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」より

非正規雇用が半数以上を占める

年収の低さを考えると、非正規雇用が少なくないと想像されますが、実際のアンケート結果を見ても、「非正規雇用」が55.2%と半数以上が非正規雇用者であることがわかりました。「正規雇用」は22.3%と、その半数以下にとどまっています。

また、現在「就労していない」と回答した人は「求職していない・できない」「求職中である」を合わせて13.2%でした。

ひとり親世帯では、ひとりで就労と家事、育児を担うことが多いと想像されます。そうなると必然的にフルタイムの正規雇用で働くことができなかったり、就労時間を増やせない事情があるのでしょう。また、育児だけではなく、家族の介護や自身の健康上の問題から、思うように働けないというケースも考えられます。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」より

世帯年収、約6割が200万円未満

先ほどは回答者ひとりの年収を確認しましたが、ここで、世帯全体の年収を聞いた結果も見てみましょう。

「100万円以上200万円未満」が37.0%、「1円以上100万円未満」が21.0%となっており、約6割にあたる58%は世帯年収200万円未満だったということがわかります。また、「200万円以上300万円未満」は31.7%なので、これを合わせると、年収300万円未満の世帯でおよそ9割を占めることになります。世帯人数や家計の状況はさまざまですから一概には言えませんが、十分な収入を得られていない家庭が大半ではないかと想像されます。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」より

「物価上昇で家計が苦しくなった」家庭は95%

家計を苦しくするのは収入が足りないことだけではありません。当然、出費の問題もあります。「ここ数年の物価上昇が家計にどのような影響を与えているか」を聞いたところ、「非常に苦しくなった」が60.1%で最多を占めました。さらに「やや苦しくなった」(34.6%)を合わせると、約95%の家庭に物価上昇が大きく影響していることがわかりました。これまでも決して楽ではなかった生活がさらに厳しくなっている状況がうかがえます。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」より

「物価上昇でも給料は変わらず」75%超

物価が上がった分、給料が上がっていればまだよいですが、それも残念ながら多くの人にとっては当てはまらないようです。「2023年の職場の給料の変化」について聞いた設問で、「職場で賃上げはなく、自分の給料は変わらなかった」が最も多く64.4%でした。また、「職場で賃上げがあったが、自分の雇用形態には適用されなかったため給料は変わらなかった」も10.9%。合わせると75%超にのぼります。

「職場で賃上げがあり、それに伴って自分の給料も上がった」という人も23.7%みられますが、多くのひとり親世帯は収入が変わらないまま、物価上昇によってさらに生活が苦しくなっている現状が見て取れる結果です。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」より

物価上昇への対策は「冷暖房を控える」がトップ

「物価上昇が主な理由で家計が苦しくなったと思われることで、それを少しでも改善するためにやっていること」を具体的に聞いた設問では、「家で冷暖房機の使用を控えている」(64.2%)、「肉や魚、野菜を買うことを控えている」(62.1%)、「自分の食事の量を減らしている」(56.1%)が上位を占めました。

おそらくすでに節約しているなかで、さらにどこか切り詰めなければならないと考えた時、寒さや暑さを我慢して冷暖房費を抑えることを選ぶ人が多いようです。また、自分の食事を減らすことで、家計の多くを占める食費を何とか抑えようとしている様子もうかがえます。

グッドネーバーズ・ジャパン「ひとり親世帯の収入に関するアンケート」より

まとめ

本人たちの努力ではどうにもならない事態

日本の就労者の多くは何年もの間、給料の上昇が望めない上にコロナ禍や物価上昇などの追い打ちをかけられ、苦しみ続けています。ましてやシングルファーザー、シングルマザーなどのひとり親世帯には、さらにその苦しみが二重、三重にものしかかっていることが想像できる結果でした。親自身はもちろん、子どもたちにも大きな影響を及ぼす貧困の問題は、家庭内の努力などでは解決できる範疇を超えていると言わざるを得ないでしょう。貧困対策は喫緊の課題となっています。

(マイナビ子育て編集部)

調査概要

■ひとり親世帯の収入に関するアンケート/グッドネーバーズ・ジャパン

調査対象:グッドネーバーズ・ジャパンのフードバンク事業「グッドごはん」の利用者 ※利用者は、ひとり親家庭等医療費受給者証保有者に限る(ひとり親家庭等医療費受給者証とは、18歳未満の子どもを養育し、所得が限度額未満かつ生活保護を受けていないひとり親家庭等に交付される医療費助成制度の医療証)

調査時期:2024年2月2日〜2月18日

回答者数:2,391名

回答者属性:

- 性別:女性 2,302名|男性 53名 (無回答除く)

- 年代:10代 0名|20代 86名|30代 564名|40代 1,185名|50代 531名|60代以上 10名 (無回答除く)