「どうしてゴルフではヤードを使うんだろう? メートルのほうがわかりやすいのに……」初めてゴルフに触れたとき、多くの人はこんな感想を持つのではないでしょうか。今やヤードじゃないと距離がわからないというゴルファーでも、あまり詳しいことは説明ができないかもしれません。そこでこの記事では、ヤードそのものについてと、ヤードが日本で使われている理由を紹介し、実際のラウンドで役立つヤード表示の見方と注意についてまとめました。


1.ゴルフで使われる「ヤード」とは?

ヤード(yard)は主に英語圏で使われる長さの単位です。1ヤードは0.9144メートル。ヤードの距離感覚がないうちは、ヤード数×0.9でおよそのm数を導けます。また、芝のコロがりの速さはフィートで表しますが、1ヤード=3フィート=36インチです。

1ヤード = 0.9144m
50ヤード = 45.72m
100ヤード = 91.44m
200ヤード = 182.88m
300ヤード = 274.32m
400ヤード = 365.76m


日本のゴルフ場で使われている理由

日本では長さや距離の単位としてメートルが使われていますが、ゴルフではヤードを使用しています。これはなぜでしょうか。

1960年に国際単位系が採用され、世界の多くの国では、各国でそれぞれ用いていた単位をメートルに改めました。それにともなってゴルフ場の距離もメートル表記に変更された結果、今日でもゴルフ場でヤードを用いている国は、イギリス、アメリカ、日本のみです。とはいえ、この3か国には世界のゴルフ場のおよそ60%が存在し、競技人口も多いため(*1)、「ゴルフにヤードを用いるのは少数派」とまではいえないかもしれません。

実は1980年代、日本でもメートル表記にしていた時期があります。これは当時の通産省からの求めに応じたものですが、数年後にはヤード表記に戻りました。その理由には諸説ありますが、明治以降の伝統を重んじる気持ちや、長年ヤードで距離を把握していたゴルファーたちの反対の声が大きかったためといわれています。日本にゴルフを伝えたイギリスやアメリカがヤード表記のままだったこともあってか、規制が緩んで再びヤード表記されるようになり、そのまま現在に至ります。

ちなみにアメリカではヤード・ポンド法を禁止せず、2022年末までは米国測量マイルというものも使用されていました。イギリスには帝国単位(イギリスにおけるヤード・ポンド法の一種)が残っており、そのような背景からこの2か国ではゴルフ場のヤード表記を改めなかったと考えられます。現在ではメートル単位を並記しているコースもあるものの、ヤード表記が消えることはなさそうです。

*1:The R&A - 2021 Golf Around The World Fourth Edition

なぜグリーン上では「メートル」を使うのか

日本では、コース全体の距離はヤードを用いて表しますが、グリーン上にボールが乗るとメートルを使います。しかし、この理由は明確にはわかっていません。

アメリカやイギリスでは、ホールまでの距離をより短い単位で表すために「フィート」(1フィート=30.48cm)を使用します。一説には、この「フィート」が日本人にとってはなじみがないからでは、といわれています。ところがその一方で、日本でもグリーンの速さを「フィート」で表すことが一般的です。これには測定器の影響が考えられます。

ほかに、テレビの実況で視聴者にわかりやすくするため「メートル」を使用して定着した、という説もあるようです。

2.ゴルフコースのヤード:表示の種類

実際のラウンドで“ヤード”について確認すべきことは、表示の種類です。ヤードの表示の仕方はゴルフ場によって異なるため、いざという局面で慌てないように、スタート前に確認しておきましょう。

ヤード杭

ヤード杭はコースの残りヤード数を示すための杭で、数字・線の数・色などの種類があります。数字なら迷うことはありませんが、例えば「線が1本なら50ヤード・2本なら100ヤード」や、「赤が100ヤード・白が150ヤード・青が200ヤード」など、事前に知らなければとっさに迷う表示方法もあります。

ゴルフ場独自の表示方法

ヤード杭以外にも、旗や看板、植木などの表示方法があります。中には巣箱などを目印にするといった個性的な例も聞きます。スプリンクラーのヘッドに記入してあることも。しかし、このような表示は知らなければ見逃してしまう可能性が高いのではないでしょうか。特に初めてのコースでは、ヤードの表示方法を確認する必要があるかもしれません。

3.ゴルフコースのヤード:表示の注意点

残りの距離をアプリや計測器で測れる場合は、積極的に利用するとよいでしょう。そういうものがない場合はコースにある表示を参考にしますが、その際には注意すべき点があります。

「グリーンエッジまで」or「グリーンセンターまで」

まず残りというのが「どこまでの」距離なのかを確認しましょう。グリーンまでといっても、「グリーンの一番手前の部分(エッジ)まで」と「グリーンの“センター”まで」の2パターンが存在します。特にシビアに距離を読みたいグリーンで、この違いは小さくありません。

また、パー3の場合はグリーンセンターまでの場合が多いとされますが、必ずというわけではありません。

ハッキリわからない場合は、プレー前にキャディさんに聞くかマスター室に尋ねるなどして、確認しておくとよいでしょう。

杭のそばでは距離が変わる

ヤード杭が表す数値は、エッジやセンターなどのグリーン上の基点からフェアウェイ中央の点までの距離です。つまり、グリーンの基点から放射状に左右にズレた地点であるヤード杭の周辺では距離が変わってしまいます。表示ヤードよりも少し大きく打つ必要があるということを覚えておきましょう。


IPポイントを結んだ距離が表示されていることも

例えば、越えられそうな林の向こうのグリーンを直接狙ったとき、「表示の距離は長すぎる」と感じたことはないでしょうか。その理由は、湾曲したコース(ドッグレッグコース)では、ティイングエリアからグリーンまでの直線距離が表示されているわけではないからです。フェアウェイのセンターを通る「IP」地点を通過した距離が、コースの全長として表示されています。

IPとはIntercross-section Pointの略で、グリーンの中央とティイングエリアの中央を結んだ測量上の点のことを指します。コースによってはフェアウェイの中央に旗が立っているのを見ることがありますが、それがIPの目印です。パー4の場合は2打目の地点、パー5の場合は2打目と3打目の2つの地点に設置されています。

2グリーンの場合は左右にそれぞれを表示

2グリーンの場合は、使用グリーンからの距離を示す表示を見なければなりません。一般的に、左のグリーンの杭は左側、右のグリーンの杭は右側にあります。右打ちは右、左打ちは左が目に入りがちなので、プレー中に間違わないよう注意しましょう。

4.まとめ

初心者のうちは、ヤードの距離感覚がピンとこないかもしれません。けれども、頻繁に歩測を行うゴルフにおいて、ヤードで距離を捉えることは理にかなっているとも考えられます。というのも、大股歩き1歩分(約90センチ)が1ヤードなので、慣れればむしろ距離感がつかみやすいのではないでしょうか。

まずはラウンドでヤードの感覚を身につけつつ、自分の番手ごとの飛距離をおおまかにでもつかんでください。ヤード表示を上手に活用して、ゴルフの戦略性を存分に楽しみましょう。

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●平均250ヤードを超える飛距離を武器に「日本女子オープン」2勝を含む5勝を挙げている原英莉花。飛距離アップと前傾キープが期待できる“しゃがむ”動きを真似るには? 関連記事【世界基準の飛ばし屋・原英莉花は“シットダウン”でヘッドを走らせる!】をチェックしよう。


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