国の南海トラフ地震の想定で、津波の高さが全国で最も高い最大34メートルとされる高知県黒潮町。豊後水道で17日夜に起きた地震では、津波は発生しなかったが、大事をとって高台に避難する人たちもいた。

 太平洋に面した黒潮町佐賀の坂折(さこり)地区では、地区内の高台にある「コミュニティ広場」に計5世帯の10人が急な階段を上って避難した。

 区長の森田俊彦さん(60)が広場に着くと、「家で1人でいるのが怖い」という女性1人が先にいて、その後も地区の人たちがばらばらにやってきた。20〜30分ほど待機して、「津波は来ない」と知ったため、全員自宅に戻ったという。

 森田さんは「普段の訓練より緊張感があり、南海トラフ地震の対策を考える機会になった」と話した。

 「あんたどこにいる。車がいっぱい逃げてきてるよ」

 同町佐賀の海に近い集落で喫茶店を営む女性(69)は、友人からこんな電話を受けた。地震が起きて約10分後のことだ。友人は高台にある「土佐西南大規模公園」の駐車場に車で避難していた。

 女性は地震から数分後にテレビで「津波の心配なし」と知り、避難しなかった。ただ、地震後、枕元に着替えを置くなど意識が変わったという。

 黒潮町入野の「早咲地区津波避難タワー」の近くに住む堀野知代さん(75)も地震直後にテレビで「津波なし」と確認し、避難しなかった。一方で、近くの親戚の高齢女性は余震に備え、息子夫婦の車に乗せてもらったまま、すぐ逃げられるように30分ほど待機していたという。

 黒潮町情報防災課の担当者は「今回の地震は夜遅くで、津波のおそれなしという速報も速く、避難した人は少ない印象だ。状況にもよるが、揺れが収まったらすぐ高台などへの避難行動に移ってほしい」と話している。(原篤司)