山梨県が富士山で実現を目指す登山鉄道構想に反対する市民団体が26日に設立された。団体は全国規模の反対運動をめざし、ネットによる署名活動を同日から始めた。同じく反対を表明している富士吉田市と連携し、堀内茂市長を顧問に迎えた。

 団体は「富士山登山鉄道に反対する会」。市内で観光や宿泊、飲食などに携わる6人が発起人となって設立し、ホームページを開設した。顧問には富士急行社長で富士五湖観光連盟会長の堀内光一郎氏も就き、市議20人のうち17人が名を連ねた。

 発起人6人はこの日、市内で記者会見を開いた。設立趣意書を公開し、県の姿勢について、噴火などに備えた災害対策や、電気バス(EVバス)などほかの交通手段との比較検討が不十分であると指摘した。

 また、市が昨年10月〜今年1月に実施したネットアンケートで、構想に否定的な意見が6割を超えたことも念頭に「地域住民や全国の多くの意見に耳を傾けようとしていない。大きな不信感を抱いている」と表明した。

 山小屋でつくる「富士山吉田口旅館組合」事務局長の井上義景さんは「鉄道が一番いいとはとても思えない」と述べ、富士山に適切な交通手段を考える勉強会の開催にも意欲をみせた。

 団体代表で北口本宮冨士浅間神社の宮司、上文司(じょうもんじ)厚さんは「構想の白紙撤回をめざす」と決意を述べ、会見後の取材には「これ以上の大規模開発は富士山の怒りに触れる」と話した。

 団体側の関係者によると、設立の背景には、富士北麓(ほくろく)地域の自治体では富士吉田市だけが反対を表明し、ほかの首長からは賛成意見が目立つことへの危機感があるという。顧問の堀内市長はこの日、「住民の皆さまから反対の声が出てきたことを大いに歓迎する。反対の輪が広がることを期待している」とコメントを出した。

 長崎幸太郎知事は25日の定例会見で市民団体の設立について問われ、「議論をやっていこうとする動きはたいへん歓迎だ。県民的な議論を戦わせる中で、最適な解を導いていきたい」と語った。(池田拓哉)