一番の持ち味は長打力



外野のレギュラー奪取へ期待がかかる萩尾

 4年ぶりのV奪回を狙う巨人。打順が固定されていないのが、一番打者だ。開幕カードの阪神3連戦はドラフト3位の佐々木俊輔が起用されたが、2カード目の中日戦(バンテリン)は萩尾匡也が3試合連続「一番・右翼」で起用された。3カード目のDeNA戦(東京ドーム)は萩尾、浅野翔吾、吉川尚輝と日替わりで起用する形となった。

 萩尾は自身の置かれた立場が分かっているだろう。外野陣は佐々木以外にもオコエ瑠偉、松原聖弥、浅野、ファームで一軍昇格を目指す秋広優人、岡田悠希とライバルは多い。与えられたチャンスで結果を残せるか。非凡な打撃を垣間見せている。2日の中日戦で4回に左中間適時二塁打。プロ初打点をマークした。6回の守備で右足を負傷して途中交代したが、翌3日も自慢の長打力でアピールした。3点差を追いかける8回一死で祖父江大輔のフォークを振り抜くと、打球はバンテリンドームの左翼席へ。ダイヤモンドを颯爽と駆け抜けた。

「走攻守3拍子そろった選手ですが、一番の持ち味は長打力。自分のツボを持っている。巨人は岡本和真以来生え抜きの和製大砲が出ていませんが、萩尾は後継者になれる逸材です。昨年は悔しい思いをしただけに、期する思いは強いでしょう。佐々木、浅野と切磋琢磨してハイレベルな競争を繰り広げてほしいですね」(スポーツ紙記者)

1年目は一軍で11試合出場のみ


 熊本・文徳高で甲子園出場は叶わなかったが、高校通算46本塁打をマーク。慶大に進学後はレギュラーに定着した3年春秋のリーグ戦連覇に貢献し、急激な成長曲線を描く。4年春に5本塁打、17打点で二冠に輝くと、秋に打率400、4本塁打、17打点で戦後16人目となる三冠王に輝いた。

 ドラフト2位で巨人に入団。即戦力の強打者として期待されたが、プロの壁にぶつかった。11試合出場で打率.063、0本塁打。イースタンでは101試合出場で打率.283、7本塁打、36打点と好成績を残したが、一軍の投手は球速、制球力とレベルが上がる。結果を出さなければいけないという気負いもあっただろう。16打数1安打で10三振と打席で迷いが見られ、本来の豪快なスイングが影を潜めていた。

 同期入団の選手たちが活躍していただけに、悔しい思いは強かっただろう。ドラフト4位で入団した門脇誠はシーズン終盤に遊撃のレギュラーに定着するなど126試合出場で打率.263、3本塁打、21打点、11盗塁をマーク。今年は背番号が「5」に変わり、遊撃のレギュラーを確約されている。ドラフト1位の浅野も8月18日の広島戦(マツダ広島)でプロ初アーチを放つなど、24試合出場で打率.250、1本塁打、2打点。高卒1年目であることを考えると、十分に合格点をつけられるだろう。

 他球団に目を移すと、38年ぶりの日本一に輝いた阪神のドラフト1位・森下翔太が94試合出場で打率.237、10本塁打、41打点。夏場以降に右翼の定位置を獲得し、新人の右打者で球団史上43年ぶりの2ケタ本塁打をクリアした。
 

巨人の未来のためにも


 萩尾が首脳陣の信頼をつかむためには、目に見える結果でアピールするしかない。昨秋は台湾のウインター・リーグに参加し、17試合出場で打率.326をマーク。自主トレは首位打者の実績を持つ松本剛(日本ハム)に弟子入りし、打撃技術を学んだ。

 阿部慎之助監督が就任した今季は外野の3枠のレギュラーがすべて白紙だ。丸佳浩、梶谷隆幸、長野久義と実績十分のベテランが控えるが、若手が台頭してこなければ、巨人の未来は明るくない。オープン戦では佐々木が16試合出場で打率.400をマークし、強烈に存在感を示したが、萩尾も成長の跡を見せた。14試合出場で打率.280、1本塁打、6打点。打席の内容も充実していた。3月12日のソフトバンク戦(鹿児島)では4回二死一塁で、石川柊太が初球に投じた内角高めのパワーカーブを振り抜いて左翼ポールを直撃する一発。鹿児島に遠征中の慶大の選手たちがスタンド観戦した試合で、輝きを放った。

 メジャー通算178本塁打のルーグネッド・オドーアが開幕直前に退団したことは衝撃だったが、外野のレギュラー奪取に向けてライバルが減ったと考えられる。このチャンスをものにできるか。

写真=BBM