成功も、失敗もありながら



大卒2年目の萩尾はパンチ力のある打撃をアピールしている

 巨人が獲得に乗り出していた筒香嘉智が、古巣のDeNAに入団することが決まった。

 筒香は日本球界で通算205本塁打をマーク。侍ジャパンでも四番を強めるなど、実績は申し分ない。メジャー通算178本塁打のルーグネッド・オドーアが開幕直前に退団し、左の長距離砲として欲しい存在だったが縁がなかった。ただ、巨人の外野陣の未来を考えると、マイナスに捉える必要はないだろう。その根拠となるのが若手選手たちの台頭だ。

 4月14日の広島戦(東京ドーム)では、大卒2年目の萩尾匡也が1点ビハインドの三回一死一塁で左中間スタンドにたたき込む逆転の2号2ラン。この一打が決勝打となり、今季最多の6連勝に導いた。萩尾の魅力はパンチ力だ。19日現在、16試合出場で17三振と粗さは目立つが、一軍の試合に出続けなければ対応力が身に付かない。11日のヤクルト戦(神宮)から一番で6試合連続スタメンと阿部慎之助監督の期待値は高いだけに、打線をけん引する核弾頭になれるか。


ルーキー・佐々木も開幕から攻守で躍動している

 ドラフト3位の佐々木俊輔も攻守で新風を吹き込んでいる。13日の広島戦(東京ドーム)では、二死一、二塁のピンチで打球を処理すると右翼から本塁へ好返球。二塁走者・田村俊介の本塁生還を阻止した。打撃でも0対0の6回に先頭打者で中前打を放つと、二盗に成功。岡本和真の天井直撃エンタイトル適時二塁打で先制のホームを踏んだ。逆転を許した後の8回も右中間二塁打で出塁し、塁上で派手なガッツポーズ。岡本和の適時内野安打で同点に追いつき、延長12回サヨナラ勝利に貢献した。

 萩尾と同様に、成功体験ばかりではない。「二番・中堅」でスタメン出場した17日の阪神戦(甲子園)では、3回二死一、二塁のピンチで森下翔太の打球で目測を誤り、1度前進して後方に切り返したが足を滑らせて転倒。慌てて体勢を立て直したが追いつけず、先制の2点適時二塁打に。1つのミスが勝敗を分ける形となり、決勝点となった。

若手に期待するチームづくり


 萩尾、佐々木は共にレギュラーを確約されているわけではない。外野陣はオコエ瑠偉、重信慎之介のほか、実績十分の丸佳浩、長野久義と実力者がズラリ。ファームにも若手成長株の浅野翔吾、秋広優人、岡田悠希や松原聖弥、故障から復帰した梶谷隆幸が一軍昇格を虎視眈々と狙っている。

 スポーツ紙記者は、「筒香が入れば戦力になったと思うが、日本の野球にアジャストするために打席数を与える必要があったでしょう。定位置を狙う若手選手たちの一本立ちを考えると、彼らに期待するチームづくりのほうが長期的に見るとプラスに作用する」と期待を込める。

球団OBも望む新戦力の台頭


 2年連続Bクラスから巻き返しを狙う巨人は阿部監督が就任し、変革期を迎えている。外野の3枠すべてのポジションで定位置が決まっていないのは、実績がない若手たちにとってチャンスと言える。球団OBの堀内恒夫氏も開幕前に週刊ベースボールのコラムで、新戦力の台頭を望んでいた。

「首脳陣からしてみれば、松原、オコエ、梶谷のいずれかが定位置を獲るようではいささか新鮮味を欠く。だから、佐々木を抜擢する可能性も十分に考えられる。さらに昨季10本塁打、打率.273をマークしている進境著しい今季4年目の秋広も、レフトの定位置獲得には丸とのポジション争いを制する必要があるから、安穏としてはいられないはずだ。萩尾に関しては、昨年のこの時期に比べたら格段にバットを振ることができるようになった。まだ変化球のボール球を振るという悪癖はあるが、明らかに一皮むけていることは間違いない。レフトとセンターを中心とする外野のポジション争いが、ここ数年間低迷していたチームを活性化していくことは間違いない。それぞれの選手たちが『今年はいつもとは違うぞ!』という危機意識を持って臨んでいる。昨年とは打って変わり、競争意識を煽り続ける阿部新監督の手腕に大いに期待したいものだ」

 萩尾、佐々木が一歩リードしているが、高卒2年目の浅野がはい上がってくるか。昨年121試合出場で打率.273、10本塁打、41打点と頭角を現した秋広は開幕からファーム暮らしで奮起が求められる。V奪回に向け、若手の成長が大きなカギを握っている。

写真=BBM