ミーティングから並々ならぬ空気



横浜清陵高はシード校・横浜創学館高に勝利。4回戦進出で夏のシード権を得ている[写真=BBM]

【4月13日】
春季神奈川県大会3回戦(等々力)
横浜清陵高7-4横浜創学館高

 夏の甲子園出場をかけた神奈川大会のシード権は、春の県大会16強以上。3回戦がシードをかけた大事な一戦だ。勝利した16校のうち、公立勢は4校。横浜清陵高はシード校(昨秋の県大会8強以上)を撃破した。

 横浜創学館高との3回戦で、7対4の逆転勝利。準々決勝進出で第2シードを得た2019年以来のシード権(第3)を獲得した。過去の夏の10大会で7回、シード入りした私学強豪校からの価値ある1勝を挙げている。

 三塁ベンチ裏。試合前のミーティングから並々ならぬ空気が流れていた。2020年から同校を指揮する野原慎太郎監督は言う。

「最初から攻撃的に、圧倒するぐらいでいこう、と。勝つ前提で入りました」

 一つの教訓があった。春の県大会前最後の練習試合を、野原監督は振り返る。

「長野日大さんと対戦したんですが、初回で相手打線のスイングにのまれて……。大敗(2対12)しました。自分たちの弱いところが出た。試合では、勝てるかな? どうかな? では通用しない。勝つ前提の強い気持ちが必須。反省を生かして、この一戦に向けて、研究を重ねてきました。エースの鈴木君(鈴木圭晋、3年)を打てれば、勝機は五分五分ある」

 横浜清陵高のモットーは“全員攻撃 全員守備”“準備 全力 最後まで”である。ベンチ入り25人の背番号は、春と秋は五十音順としている。エースや主力という概念を作らない。対戦相手に合わせたベストの布陣は毎試合変わる。試合の前半、後半でもその時出ている者がレギュラーという考えだ。番号の固定観念による意識の差をつけたくないという考えもある。「誰でもどこでも、出場する意識でいるべき」というのが野原監督の指導方針だ。

「準備全力」においては、相手の右腕エース・鈴木対策をしてきた。「速い真っすぐ、スライダー、フォークを打ち込んできました。試合では『ジャンケンで負けたら仕方ないないから』と、真っすぐか変化球に絞らせ『イチ! ニ! サン!』で打たせました」(野原監督)。公立校が強豪校を相手にするには、捨て身の作戦でいくしかない。積極打法が功を奏した。打順も「上位3人から打てる選手を並べ、3人で複数走者のチャンスを作り、四番はスクイズや小技で1点をもぎ取る。何時間もかけて一晩? いや、朝まで考えました」と、個々が生きるオーダーを熟考。際どいバントも多用して相手校を揺さぶり、鈴木からは計7得点した。

背番号19が144球の力投



先発の変則左腕・二野宮は144球の力投で4失点完投した[写真=BBM]

 投げては背番号19のサウスポー・二野宮遥(3年)が144球の力投で2失点完投。サイド気味から変化球は、カーブのみ。また、7、9回には「自分には武器がないので……。タイミングが合っていない」と判断し、秋以降、練習を重ねてきた60キロ台のスローボールを披露。9回はクリーンアップ2人から空振り三振を奪い、3点リードを逃げ切った。

 野原監督は前任の大師高で2015、17年夏に5回戦進出、19年夏も4回戦進出と公立の雄として存在感を示してきた。横浜清陵高でも21年夏に8強。第3シード獲得も冷静だ。

「特別な感情? それは、ありません。創学館に勝ったということだけ。(4回戦まで)成長できる6日間をいただいた。大会期間中が一番、成長するんです」

 選手たちも浮足立つことなく、しっかり足元を見つめている。左腕・二野宮は言う。

「自分たちの目標は、甲子園で勝つこと。一戦一戦を全力で、勝ち上がっていきたいです」

 4回戦(4月20日)では三浦学苑高と対戦する。横浜清陵高は試合本番まで充実の6日間を過ごす。

文=岡本朋祐