高校野球の第71回春季静岡県大会が20日に開幕し、5球場で1、2回戦の計12試合が行われる。4大会連続で出場する磐田東は7日に監督が交代。3月31日のセンバツ決勝で初優勝を飾った健大高崎(群馬)でコーチを務めていた赤堀佳敬氏(31)が新監督に就任した。前チームでは主に打撃指導に携わり、日本一に貢献した若き指揮官の初陣は21日の静岡学園戦(浜松)に決まった。

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 センバツVを果たした健大高崎ナインをコーチとしてうれし涙で見届けた赤堀氏が、磐田東で新たなスタートを切る。初の監督業。「僕にとっては日本一の向こう側、磐田東にとっては初の甲子園への挑戦が始まる。今の3年生の甲子園挑戦権はあと1回だけだからこそ、死にものぐるいで取りにいきたい」。赴任して日は浅いが、21日には初陣を迎える。昨秋の県大会は初戦敗退(飛龍、0●1)。夏を占う大会に向け「やれることをやって、子どもたちの自信になるゲームをしたい」と意気込んだ。

 健大高崎で打撃指導をしていた赤堀監督が目指すのは「打ち勝つ野球」。だが、足を使って相手を揺さぶる健大高崎の代名詞「機動破壊」に強打をプラスした指揮官として、「攻撃は最大の防御。それを成し遂げるには決定的な守備力と走塁があってこそ」と、狙いを明かした。

 着任後の1週間は練習を見守り、個性などの把握に努めた。時折、選手を集めて、自身が目指す野球の基本的な考え方を伝えた。走塁ではアウトカウントに応じたリード幅の違いを体の動きで実践。打撃ではボールを見逃す際、相手投手が投げた1球から多くの情報を得るように「どんな球でも打ち返す」という意識を高めた。過去に指導した健大高崎や、甲子園常連校の盛岡大付(岩手)と比べて選手層は薄いが、「打撃で教えられたことを自主練習で頑張ってやろうとする生徒らを見て、勝負していけると思った」と成長を楽しみにした。

 目指す指導者像は、自身を育ててくれた健大高崎の青柳博文監督(51)と、盛岡大付の関口清治監督(46)。「生徒が卒業した後に『教えてもらった』と言いたくなる監督」という。2人に共通している部分について「型にはめない。高校生らしさを残しながら、いいところを伸ばしていってあげたい」と説明した。

 だからこそ、選手には勝ち負け以外にも求めるものがある。健大高崎のような「勝ち負け以外にもプラスで何かを感じさせる価値のあるチーム」になること。「エリート選手が集まる中でも、大事なところはそういう部分と感じた。全力疾走や声がけ、野球(のプレー)に関係ないところにもこだわってほしい。勝ち負けは後からついてくれるもの」と、人の心を揺さぶる野球で頂点に立つことを誓った。(伊藤 明日香)

  ◆赤堀 佳敬(あかほり・よしのり)1993年4月1日、三島市生まれ。31歳。小学3年から三島向山少年野球クラブで野球を始めた。三島南中から伊豆中央高を経て、中京大に進学。卒業後は磐田南に赴任してコーチ、17年から盛岡大付で副部長。19年から健大高崎でコーチを務め、打撃だけではなく、スカウティングも担当した。

 磐田東ではプロ注目の184センチ右腕・寺田光投手(3年)がエースとしてチームを引っ張る。最速145キロで持ち味は「制球力と直球の勢い」。春県予選の上位決定戦では強敵・常葉大菊川を1―0で完封した。打者で存在感を見せているのが吉沢誠基外野手(3年)で、赤堀監督も「手打ちじゃなくて、タイミングをとってバットが振れている。面白い選手」と評価した。

 近年の県大会での最高成績は、春が2017年4強、秋は10年準優勝。夏は11年準Vで21年にはベスト4入り。オリックスの鈴木博志投手(27)、広島の二俣翔一内野手(21)らプロ野球選手も輩出している。

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 16日に県大会の組み合わせ抽選が行われた。夏の県大会シード権はこれまでの8校から、今大会は3回戦進出の16校に拡大。注目のカードは、21日の2回戦で対戦する昨夏準V・東海大静岡翔洋と常葉大菊川。常葉大菊川は昨夏の準々決勝で敗れており、雪辱の舞台になる。勝者が3回戦でプロ注目198センチ右腕・小船翼投手(3年)を擁する知徳と対戦する可能性がある。大会出場校で最長ブランクとなる46大会ぶり出場の川根は20日の2回戦で星陵と対戦する。

 決勝進出の2校は5月18日から岐阜県で開催される春季東海大会に出場する。