◆■ 渡邉、湧川らの安定したプレーで力を発揮

 3月17日、「第54回全九州高等学校バスケットボール春季選手権大会」の男子決勝(パートA)が唐津市文化体育館にて行われ、福岡大学附属大濠高校(福岡県)が優勝を飾った。

 福大大濠の決勝の相手は福岡第一高校(福岡県)。同じ福岡県を代表するチームで、日頃から県大会だけでなく九州大会、そして全国大会でもしのぎを削るライバルだ。

 福岡第一は準決勝で九州学院高校(熊本県)を相手に出だしから大量得点を重ね、前半を68−36。最終的には125−85と圧倒していただけに、「(福岡第一の)準決勝での勢いは隣のコートで試合をしていた僕らでも感じるぐらいだったので、(決勝では)試合の入りで受けに回らないといいなとは思っていました」と、福大大濠の片峯聡太コーチ。

 だが、その思いとは裏腹に、決勝の出だしに好スタートを切ったのは福大大濠で、見竹怜のドライブや渡邉伶音(ともに2年)の多彩な攻めから得点を挙げていく。「渡邉や見竹、湧川(裕斗/2年)、ガードの榎木(璃旺/1年)が落ち着いていました。オフェンスの出来がどれだけ安定するかというのは、(試合に)入ってみないと高校生なので分からないところがありますが、ディフェンスから固めていくという約束事をしっかりと守った上での試合の入りだったので、安心して見ることができました」と、片峯コーチは序盤の戦いを振り返った。

 結局、第1クォーターを24−14とした福大大濠は、第2クォーター以降もリードを広げ、終わってみれば81−54。大差をつけて注目の一戦を制した。

◆■ウインターカップで見た王者の背中

 勝又絆(1年)、見竹、渡邉、湧川と4人が2ケタ得点をマークした福大大濠。今大会では昨年からスターターを務めていた髙田将吾(2年)が膝の故障により不出場となったが、その間に「見竹らが伸びてきている」と、指揮官は大会を通して活躍を見せた見竹の名前を挙げる。また、髙田自身もトレーニングにより体が大きくなっていて、4月半ばに復帰予定だとも語った。

 見竹のほかにも準決勝では前半にファウルがかさんだ渡邉に代わって、サントス マノエルハジメ(1年)が14得点9リバウンドと奮起。スピードのある村上敬之丞(1年)など、今後が楽しみな選手も多い。そのため、片峯コーチは遠征や合宿などが続く春休みの時期に「一度チームを壊したい」と言う。

 それは、選手たちを様々な組み合わせで起用することができるからこそ、これまでの布陣にこだわらず、いろいろな可能性を探ってみたいということでもある。加えて、「トランジションや一対一などの局面で選手たちが強くプレーできるように磨いていきたいですね」とも、コメントした。

 全九州高校春季大会では、ディフェンス、ルーズボールなど数字に表れないプレーでの積極性も光った福大大濠の選手たち。そんな彼らにとって忘れられないのが昨年のウインターカップだ。同大会では決勝まで勝ち上がったものの、決勝で福岡第一に53−63で敗れて準優勝となった。

「昨年のウインターカップで一番悔しい思いをしている選手たちですから、チャンピオンの背中を二度と見たくないという思いで今もやっていると思います。私自身も指導者として、彼らに(優勝チームが喜んでいる)あの景色は絶対に見せたくないという思いでやっているので、そういったことがプレーの上手い下手ではなく、球際のところ、リバウンドやルーズボール一つに出るのだと思います。そこは彼らと意思疎通できているのかなと感じます」と、片峯コーチは言う。

 今年の夏のインターハイは福岡県での開催となる。まずは夏の全国、そしてその先の冬のリベンジに向けて、福大大濠はさらなるチーム力向上に励んでいく。

取材・文=田島早苗