MotoGP第4戦スペインGPが、2023年4月28日から30日にかけてヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトで行なわれました。Moto2クラスにフル参戦する小椋藍選手(イデミツ・ホンダ・チームアジア)は、決勝レースを転倒リタイアで終えました。
2戦欠場からの2023年シーズン、復帰後は“レース勘”に少しズレが?
2023年シーズンもMoto2クラスに参戦する小椋藍選手(#79/ホンダ)は、2022年シーズンではチャンピオンシップランキング2位を獲得しています。今シーズンは開幕前のトレーニング中に転倒して負った左手首の骨折のために手術を受け、開幕戦と第2戦決勝レースを欠場。復帰レースとなったのは第3戦のアメリカズGPでしたが、本来のポテンシャルを考えれば程遠い、15位でゴールしています。

そうして迎えたのが、スペインGPでした。スペインGPが行なわれるヘレス・サーキット‐アンヘル・ニエトは、小椋選手がロードレース世界選手権における初優勝を飾ったグランプリです。ただ、怪我のために開幕前のテストに参加できなかった小椋選手にとって、現時点では「感覚で言うと、いままでのレースとはちょっと違う」週末でした。
スペインGPではすでに怪我の影響はなく、左手の動きで気になるところも無い。いま影響しているのは、テスト不参加と欠場による、ライバルたちよりも少ない走行時間だからです。
「いままでのレースウイークは、金曜、土曜の集大成をちゃんと日曜日にやり遂げるというものでした。今回は、何位で終わろうと、先につながる内容なら良いと思っているんです。やってきたことをちゃんとやり遂げるというよりも、もっと先を見て、という段階です」

小椋選手は3回のプラクティスでタイムが伸び悩み、総合19番手。予選をQ1から迎えることになりました。しかし予選に向けて施した変更が功を奏し、予選ではQ1を突破してQ2に進出すると、5番手を獲得しました。
日曜日の決勝レースでは、序盤からトニー・アルボリーノ選手(#14/エルフ・マークVDSレーシングチーム)と4番手争いを展開します。
レース中盤に入り、3番手の選手をとらえられるだろうと考えていましたが、同時にアルボリーノ選手を引き離すことができませんでした。そして13周目、1コーナーでアルボリーノ選手が小椋選手をパスしようとした際、クロスラインで抜き返そうとした小椋選手のフロントタイヤがアルボリーノ選手のリアタイヤと軽く接触。小椋選手は転倒を喫してリタイアとなりました。

レース後、話を聞くためイデミツ・ホンダ・チームアジアのピットを訪ねると、小椋選手は落ち着いた様子でピットから出てきました。スペイン南部に位置するヘレス・サーキットは夕方でもまだ十分に日差しが強く、陽光を避けるように日陰に入ると、小椋選手は転倒の様子をこう説明しました。
「抜かれたらクロスラインで抜き返そうとするのは当然ですが、距離感のミスもあり、アルボリーノの動きも読み切れてなかったです。クロスをかけ損なっての転倒でした」
今季の走行時間の少なさが影響したところもありますか? と聞けば「プラクティス(練習走行)も基本的に単独で走ってしまって、今年はあまり人と走っていません。そういうところですかね。“レース勘”みたいな……そこがちょっとずれた部分は多少あるかな、という感じですね」との答えが返ってきました。
今回ポジションを争ったアルボリーノ選手は、小排気量クラスであるMoto3時代から小椋選手とほぼ同時期に参戦していて、また2022年マレーシアGPのMoto2決勝レースでトップ争いを展開したときには、小椋選手がアルボリーノ選手をパスしようとして転倒を喫しています。

2022年終盤からアルボリーノ選手と絡んでいますね? と水を向ければ「アルボリーノはね、お互いに意識していると思いますよ」と小椋選手。
“お互いに”と表現するあたり、小椋選手もアルボリーノ選手を意識していることが窺えます。
「僕もあいつがいたら“アルボリーノだ!”と思うし、彼も同じような感じでしょうね。今回の転倒はそういうことを分かった上でのことなので、距離感も含め、瞬間に起きる状況への準備不足というのがあっての結果かな、とも思います」
とはいえ、アメリカズGPでは15位、スペインGPでは転倒リタイアながら表彰台を射程圏内に収め、出遅れた分を着実に詰めています。次戦フランスGPでは、上位を走るライダーとのギャップはさらに縮まっていくでしょう。
MotoGP第5戦フランスGPは、5月12日〜14日、ル・マン-ブガッティ・サーキットで行われます。