バイクのエンジンは問題ない状態でもかなりの高温になりますが、それを冷やすことで問題なく走ることが可能です。しかしメンテナンス不良や故障によって冷却が滞ると、発生するのがオーバーヒート。そんなオーバーヒートが起こってしまった場合の対処法を解説します。

バイクのエンジンは、どうやって冷やしている?

 バイクで走っているだけで、エンジンはかなりの高温になりますが、それを冷やすことで問題なく走行することができる仕組みとなっています。しかし、メンテナンス不良や故障によって、エンジンの冷却が滞るとオーバーヒートが発生。

 オーバーヒートは突然起こる為、実際に起きてしまった際に慌てずに済むように、事前に対処法を学んでおきましょう。

バイクのエンジンには空冷と水冷という、ふたつの冷却方式がある。
バイクのエンジンには空冷と水冷という、ふたつの冷却方式がある。

 バイクのエンジンには空冷と水冷という、ふたつの冷却方式があります。他にも、スズキが得意とする、オイルで冷やす油冷もありますが、特殊な事に加え、結局は空冷に近いので今回は触れません。

 そんな空冷と水冷はそれぞれの名称からわかるように、走行風と冷却水でエンジンを冷やす事が特徴。最近では排ガス規制や騒音規制の強化もあって、エンジンの温度をコントロールしやすい水冷が主流となっており、空冷は減っていますが、独特のエンジン音や並んだ冷却フィンの美しい見た目など、旧車を中心に高い人気を誇ります。

 まず、水冷でエンジンを冷やした冷却水はラジエーターに送られて、ここで走行風や電動ファンによって冷やされ、またエンジンへと戻って冷却するという流れを繰り返す方式。

 一方の空冷は走行風によって、エンジンを直接冷やしているだけですが、放熱をよくするためにエンジンのシリンダーやヘッド部分にはたくさんのフィンが装着されています。

オーバーヒートするのはどんな時?

 水冷の場合、エンジンや補機類に問題がないのにオーバーヒートすることはありえないと言っていいでしょう。メンテナンス不良でオーバーヒートするとすれば、冷却水の不足が考えられます。

 冷却水はすぐには減りませんが、少しずつ蒸発するので定期的な点検と補充が必要。足りない状態では当然、オーバーヒートしてしまいます。

 また定期的に交換していないと、冷却水が流れる経路にサビや汚れが発生し、ラジエーターも含めた各所で流れが悪くなってエンジンの温度が高くなることも。特にラジエーターは高温になった冷却水を冷やす重要な部分で、内部は細かい水路となっているので詰まりが発生しやすい形状となっています。

 さらに故障という点では、ラジエーターに風を当て、強制的に冷やす電動ファンのトラブルも考えられます。

 一方、厳しいのが空冷で、冷却水もなく、それが流れる経路もないためシンプルでメンテナンスフリーという点はメリットですが、それゆえにエンジンに風が当たらないことには、ほとんど冷やすことはできません。

 走っている時はいいですが、ノロノロ進むだけの渋滞ではエンジンの温度が上がってしまう事に加え、トラックの後ろなど大型車に風を遮られた状態で走っているとエンジンにも風が当たらず、オーバーヒート気味になることもあるので注意してください。

オーバーヒートが発生すると、フィーリング的には力がなくなってきたり、甲高い音が発生したりするなど、いつもとは違った違和感が発生する。
オーバーヒートが発生すると、フィーリング的には力がなくなってきたり、甲高い音が発生したりするなど、いつもとは違った違和感が発生する。

 そんなオーバーヒートが発生すると、フィーリング的には力がなくなってきたり、甲高い音が発生したりするなど、いつもとは違った違和感が発生。さらに水冷の場合は水温計や警告灯によってライダーに知らせてくれるのですが、問題は空冷で、目で確認できない為、フィーリングだけが頼りです。

 いずれにしてもおかしいと感じたら、速やかに安全にところに止めてエンジンを切ることが重要。

 クルマならラジエーターの容量が大きいこともあって、ファンが回っている場合は止めないほうがいい事もありますが、バイクの場合はラジエーターも電動ファンも小さいので、まずはエンジンを止めることが基本。つまりこれ以上、超高温の発生元を動かさない事が重要となります。

 なお、しばらくすればエンジンは冷え、焼付きが起こっていなければ再始動も可能ですが、前述したとおりオーバーヒートをするなにかしらの原因があるため、再始動しても走行していると、再びオーバーヒートする可能性が高いのが現実。

 また、始動できても高温によりエンジンに歪みなどが発生していることも考えられるので、ロードサービスを呼んでショップやディーラーに運んでもらうようにしましょう。

正しいエンジンの熱対策を行なう

 水冷では水温や油温を管理することで、オーバーヒートの前兆を把握することができます。

 また空冷でもフィンの間に挟むタイプのシリンダー温度計がラインナップされているため、走っている間も定期的に確認することで異常が発生した際に早めに知ることが可能。日頃から愛車の適正温度を知っておくのも対策のひとつです。

水冷なら水温や油温を管理することで、オーバーヒートの前兆を把握することができる。
水冷なら水温や油温を管理することで、オーバーヒートの前兆を把握することができる。

 勘違いしやすいの点としては、高温対策として温度が高めだからと言ってオイルクーラーを装着したり、油膜確保のためにオイルの粘度を変えたりすることは根本的な解決にならないという点。

 それらは対処療法にすぎないため、不具合などを解消したうえで、オイルクーラーを付けたり、オイルの粘度を硬くしたりするのが順序として正しいものとなります。

 ちなみにオイルの粘度を上げると熱抜けが悪くなるので、温度自体は高くなってしまいます。ノーマルなのにオーバーヒート気味というのは明らかにおかしいので、まずはプロに点検を依頼するようにしましょう。