道路上の主な設備といえば信号機や道路標識がありますが、これらの設備に負けず劣らず道路でよく目にするものとして白い「ガードレール」が挙げられます。しかし、実はガードレールにはいろんな形状があると言います。いったいどのような形状のガードレールがあるのでしょうか。

安道路の安全守るガードレール、その形状に迫る

 ガードレールといえば、白色で同じような形をしているイメージがあるかもしれません。しかし、じつはその種類は多種多様。場所によってさまざま形状のガードレールが使い分けられていると言います。では、いったいどのような種類があるのでしょうか。

一般的にガードレールと呼ばれている設備は、正式名称で「防護柵」というのが総称
一般的にガードレールと呼ばれている設備は、正式名称で「防護柵」というのが総称

 一般的にガードレールと呼ばれている設備は、正式名称で「防護柵」というのが総称で、大きく分けて「車両用防護柵」と「歩行者自転車柵」の2つに分類されます。車両用防護柵はその名のとおりバイクやクルマなどのために設置される防護柵ですが、さらに細かく分類されています。

 それが、「ガードレール」「ガードパイプ」「ガードケーブル」「ボックスビーム」の4種類。つまり、道路に設置されているすべての防護柵は一般的に「ガードレール」と呼ぶものの、じつは防護柵の4種類の中の一つになるというわけです。

 また、歩行者自転車柵も「乱横断防止柵」と「転落防止柵」の2種類に分類されます。つまり防護柵は、車両用防護柵と歩行者自転車用柵の両方を合わせて6つの種類で構成されていることがわかります。

 なお車両用防護柵の役割は、バイクやクルマなどが車道の外へはみ出すのを防いで歩行者の安全を守ったり、沿道にある施設などへの損害を防いだりするというものです。

ガードレールは、衝突したときに適度に変形してクッションのように衝撃を吸収する
ガードレールは、衝突したときに適度に変形してクッションのように衝撃を吸収する

 また、衝突したときに適度に変形してクッションのように衝撃を吸収するので、車両の損傷や乗員の負傷を最小限に抑えることができます。さらに、ガードレールがあることで進行方向がわかりやすくなるため、とくに視界が悪くなる夜間は安心して走行できるメリットもあります。

4種類ある車両用防護柵にはどのような形状があるのか

 まず高速道路から一般道まで幅広く設置されているのが、支柱と「ビーム」と呼ばれる鉄板で構成されているガードレール。ビームは強度を確保するため、波打つように折り曲げられており、この折り曲げが多いほど強度が高まる仕組みです。

標準的な強度の2山型ガードレール
標準的な強度の2山型ガードレール

 形状には、標準的な強度の2山型と、高強度となる3山型の2種類があります。

 さらにガードレールは強度別に7種類に分けられ、強度が低い順にC種、B種、A種、SC種、SB種、SA種、SS種となっています。これらは道路の設計速度や環境に合わせて設置されるのが一般的のようです。

 大まかな設置例は、C種が市町村道、B種が県道や国道、A種が幹線道路や高速道路、SC種とSB種が高速道路でも重大被害発生のリスクがある区間、SA種とSS種は鉄道の線路上に高速道路が走っている跨線橋など、クルマが落下したら危険な場所に設置されます。

 なお、A種以上のガードレールになると厚さ4mmの分厚いビームが使われるのが一般的。また、SC種以上が3山型となり、SA種とSS種は上部にパイプを付けて強度を高めています。

支柱と複数の丸パイプで構成されている「ガードパイプ」
支柱と複数の丸パイプで構成されている「ガードパイプ」

 そして支柱と複数の丸パイプで構成されている「ガードパイプ」は、近年多く使われるようになっている防護柵です。ガードレールに比べて視線誘導性は低いものの、向こう側がよく見えるので展望性に優れており、街並みになじみやすいというメリットがあります。

 また支柱とケーブルで構成されている「ガードケーブル」は、とくに降雪量が多いエリアに設置されている防護柵です。雪がたまりにくい構造のため除雪作業がしやすくなるメリットがあるほか、ケーブル自体に弾力性があり衝突エネルギーの吸収に優れています。また、視界が良好で走行中の開放感があるので、景色が美しい道路に使われることも多いようです。

 続いて、支柱と角型パイプで構成されている防護柵が「ボックスビーム」。表裏がなく省スペース性に優れているため、道路の中央分離帯などで多く見られる防護柵です。

 一方の歩行者自転車柵は、車両の衝突に対する安全性よりも、歩行者などの転落や横断防止を目的に設置されています。そのため、パイプが細めで車両用防護柵ほど強度は高くありません。

 そして歩行者自転車柵のうち「乱横断防止柵」は、歩道の車道側に設置される防護柵。横断歩道以外の場所で、歩行者が横断するのを防ぐのが目的です。また「転落防止柵」は、河川や用水路、高さのある歩道など、歩行者や自転車などが転落するリスクがある場所に設置されます。

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 このように、交通安全を守るためにガードレールにはさまざまな工夫が施されています。道路の脇役的な存在と言えますが、ツーリングの際は景色だけでなくガードレールの違いにも注目しながら運転してみるのもよいかもしれません。

 ちなみに、白色のイメージが強い防護柵ですが、じつは他の色も存在します。国土交通省が平成16年に設定した「景観ガイドライン」を受けて、ダークグレー、ダークブラウン、グレーベージュ、オフグレーの4色が規定され、落ち着いた色のガードレールやガードパイプが増えました。

 また、スクールゾーンには、緑色の横断防護柵を設置する決まりになっています。中でも珍しいのが、山口県の黄色いガードレール。昭和38年の山口国体開催時に県知事が特産の夏みかん色を提案したことから、県道のガードレールが黄色に統一されたようです。