サンセールの店主・山岸 拓也さんにインタビュー
食べごたえがあっておいしそうな洋食がそろう洋食レストラン サンセール。
店主の山岸拓也(やまぎし たくや)さんに開業の経緯やこだわり、今後の展望などの話を聞きました。
インタビューは2021年6月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
フランス料理をはじめ、さまざまな飲食店を経験
──開業の経緯を知りたい。
山岸(敬称略)──
もともと今サンセールがある場所は、2020年夏頃までワインダイニングの店がありました。
実は、私はそのワインダイニングで料理長として働いていたんですよ。
ワインダイニングが閉店することになったとき、店舗の家主のかたから私に「店を引き継いで、続けてほしい」とお願いされたんです。
新型コロナウイルス感染症が猛威をふるっている最中でしたから、開業すべきかどうかかなり悩みました。
私は料理の世界で長年働いてきて、いつか自分の店を持ちたいという夢を持っていたんです。
せっかくのチャンスですので、ぜひ生かしたいという気持ちが芽生えてきました。
またコロナ禍だからこそ、求められているものもあるだろうとも思い、店を開くことを決意したんです。
こうして2020年(令和2年)10月、サンセールをオープンしました。
──ワインダイニングで働く以前は?
山岸──
子供のころからちょこちょこ料理をしていて、料理の世界を目指すキッカケになったのは学生時代のアルバイト。
福山の喫茶店で働いていて、料理の世界に興味を持ったんです。
卒業後、そのままその喫茶店に就職しました。
やがてフランス料理の世界にあこがれを抱くようになり、喫茶店の社長の紹介で広島市内のフランス料理店に転職しました。
その後はしばらくフランス料理の世界で働き、複数のフランス料理店やホテルのレストランで経験を積んでいます。
また、福山でステーキ店や居酒屋などでも働きました。
本場・フランスのレストランでも、研修という形で働きましたよ。
やがて、かつて働いていた店の同僚に声をかけていただいて、ワインダイニングで働くことになったんです。
コロナ禍のなか、開業を決意
──洋食店という形態にした理由は?
山岸──
コロナ禍ですので、飲食店を利用してもらえるのは家族同士や恋人同士などの親密な間柄での食事や、お一人様での食事になるだろうと思いました。
そんな状況下で、私の技術が生かせる店は洋食店だなと思ったんです。
気軽になじみのある洋食を食べられる店がいいんじゃないかと。
私は長年フランス料理の世界にいて、大衆向けのフランス料理店では洋食メニューも出していた店もありました。
また、日本の洋食自体がフランス料理の影響も受けているので、私は洋食もつくれるんです。
それにステーキ店でも働いていましたし。
あと、私自身がハンバーグや海老フライなどの洋食が好きというのも理由ですね(笑)。
──店名の由来は?
山岸──
洋食店をやろうと思ったとき、ふと思いついたのが、かつて私が好きだった洋食店のことです。
それが「サンセール」という名前の店でした。
もう今は閉店してしまったのですが……。
洋食店をするならその店のようになろうと思い、名前をお借りしました。
「サンセール(sincère)」は、フランス語で「誠実」という意味です。
ちなみに英語だと「シンシア(sincere)」になります。
簡単・便利に食べられる時代だからこそ、昔ながらの手づくりの味にこだわる
──料理や店の運営などで、どのようなことにこだわっている?
山岸──
昔ながらの手づくりの味を大切にしています。
昔に比べると料理の世界も進歩して、簡単・便利においしい食べ物ができる時代になりました。
でも、せっかくお客様が食べに来られているのですから、しっかりとこだわった手づくりの味をお出ししたいです。
その一心で、手間がかかりますが昔ながらのつくりかたにこだわっています。
スープも手づくりです。
しかも、具をたくさん入れているのが当店のスープの特徴。
やっぱり、具が多いほうがうれしいじゃないですか。
あと、とくに注目してほしいのがソース。
洋食はフランス料理の影響も大きいので、ソースは重要だと思っています。
ですから当店のソースは時間をかけて、じっくりと手づくりしているんです。
なかでも、デミグラスソースは自慢ですよ。
手間ひまかけてつくっています!
また、ボトルでお出ししているカツ・フライ用の自家製ウスターソースも自慢ですよ!
お客様はウスターソースを自前でつくるイメージがないようで、驚かれるかたが多いですね。
ウスターソースもとてもこだわっていて、甘味や酸味に加えて、ちょっとピリリとした絡みのあるスパイシーなウスターソースに仕上げています。
クセになるかたも多く、ぜひ自宅用にソースを売ってくれという話もいただいたことがありますよ(笑)。
自慢は海老フライ!サラダやスープには旬の野菜をタップリと
──海老フライのインパクトがすごいと感じた。
山岸──
海老フライは開業時からこだわっていて、人気メニューです!
私は海老フライが好きでして、同じように海老フライが好きなかたって多いと思っています。
お客様に驚いてもらえる料理もそろえたいという思いがありまして、一番わかりやすいインパクトが出せて、しかも多くのかたが好きなのは海老フライだなと。
だから、海老フライにこだわろうと思ったんです。
大きくておいしい海老フライなら、見たときも食べたときもインパクトがあるだろうと。
それで大きな海老フライが生まれたんです。
思っていたとおり、驚くお客様も多いですね。
「食べごたえがあって、おいしい!」とか「今まで食べたことがない」と喜ばれています。
実は、使っている海老はブラックタイガーなんですよ。
通常では流通していない、大型サイズのブラックタイガーです。
大きなブラックタイガーの流通ルートを探すのは、大変でした。
でも、がんばって探した甲斐がありましたね。
あとは、野菜にこだわっています。
よく揚げものや肉といっしょに、千切りキャベツが載っているじゃないですか。
せっかくなら、もっと野菜にこだわったサラダを提供したいと思ったんです。
ですからサラダの量を多めにし、野菜の種類もたくさん用意するようにしたんですよ。
基本的に、時季ごとの旬の野菜を中心に入れているんです。
ですから夏には葉物が多くなりますし、冬には根菜が多くなったりします。
当店は女性のお客様が多いので、野菜が多いのは好評ですね。
新しい食材・おもしろい食材を探すのは楽しい
──今後の展望ややってみたいことを教えてほしい。
山岸──
「メニューをもう少しそろえたいな」という気持ちがあります。
メニューのブラッシュアップはチョコチョコとやっていて、たとえばランチメニューで小食なかたのためのメニューなんかもそろえたいなと考えています。
あと肉料理はけっこう充実していると思うのですが、魚料理をもう少し増やせたらいいなと思っていますね。
海老フライの海老やサラダの野菜とかもそうですが、私は食材探しをするのが好きで、楽しいんです。
なので、楽しみながら新しい食材・おもしろい食材を探して、新たなメニューやアレンジを考えていきたいですね!
サンセールで昔ながらのおいしい洋食を
店主が昔ながらの手づくりの味わいにこだわった洋食が楽しめるサンセール。
ハンバーグ、ステーキ、カツ、極太の海老フライ。
どれも、とてもおいしかったです。
とくに海老フライは、私の人生のなかで一番おいしいと思いました。
しかもサラダは野菜タップリで、スープが具だくさんなのもうれしいですね。
家族や友人とちょっとした記念日に食べにいってみたり、一人でランチやディナーに訪れてみてはいかがでしょうか。
著者:アサノ ・ヨウスケ