◇記者コラム「Free Talking」

 「大野マジック」の裏には、貫いた流儀がある。バスケットボールB1で中地区の三遠ネオフェニックスが初の地区優勝を決めた。

 印象的だったのは、3月27日のシーホース三河戦。ホームでの「三河ダービー」を102―83で制し、自慢の攻撃力を見せつけた。就任2年目の大野篤史ヘッドコーチ(HC)は「『もっとたくさん応援が聞きたいです』っていうのを三河弁で言えるように頑張ります」とちゃめっ気たっぷりに応え、会場を大いに沸かせた。余談だが後日、豊橋駅で流れるチームのCMを「見に行ってくれるらー?」と自身のX(旧ツイッター)に流ちょうな三河弁で投稿した。

 勝っておごらず、負けて腐らず。100点ゲームでの快勝だったが、試合後の取材では冷静に語った。

 「『チームの流儀』はつくっていかないといけない。勝ったからいいや、ではなく、ゲームに対しどう準備していくか。準備が一番大事。僕は(準備は)努力だと思っているので、努力が100%そこに向いてないと努力とは言えない。そういうことを言わなくても当たり前になるチームを目指していきたい」

 チームはかつてBリーグ前身、bjリーグで優勝を飾ったが、Bリーグ発足後の最高位は初年度の中地区2位。以降は低迷し、チャンピオンシップ(CS)出場はおろか、1桁勝利のシーズンもあった。「負け犬根性」が染み付いたチームに、大野HCが意識改革をもたらした。就任後から「プロとしてブースター(ファン)を喜ばせるのが仕事」と繰り返した。就任1年目で前シーズンの2倍以上となる23勝。2年目には攻撃力で圧倒するスタイルを確立した。

 中地区優勝マジック1で迎えた、10日のアウェー富山グラウジーズ戦。前身となるオーエスジーフェニックス東三河から同チーム一筋のベテラン太田敦也が残り約2分でコートイン。フリースローを沈め、登録メンバー全員得点で中地区優勝を勝ち取った。大野HCは「選手たちが頑張った証し」とたたえる。今季の残り9試合、CSで三遠と大野HCの流儀を見続けたい。(一般スポーツ担当・広瀬美咲)