◇28日 第169回天皇賞・春(G1・京都・芝3200メートル)

 好位を進んだ単勝1番人気のテーオーロイヤルが直線で抜け出し、重賞3連勝でGⅠ初勝利を挙げた。13年目の菱田裕二騎手(31)=栗東・岡田、岡田稲男調教師(63)はともにJRA・GⅠ初勝利となった。

 有無を言わさない走りで悲願のGⅠ初制覇を決めた。テーオーロイヤルが直線入り口で早々と先頭に立った。そのまま後続を寄せ付けず完勝し、長距離重賞3連勝で頂点へ。名実ともに、長距離王の称号を手に入れた。

 「4コーナーを回る時に、20年前、ここに見に来たあの時の自分に、見ておいてくれという気持ちで追っていました。本当に今まで生きてきて、一番うれしいです」。昨年春の京都リニューアルオープン後、最多となった6万人の声援を受け、30度目のGⅠ挑戦で初Vを飾った菱田は笑顔で至上の喜びに浸った。

 京都府出身の菱田が競馬場に初めて来たのが2004年の天皇賞・春。心を動かされて、その日に騎手を志すことを決めた。イングランディーレが逃げ切ったレースだったが、今回もその時と同じ横山典がマテンロウレオでハナを奪った。

 1000メートル通過が59秒7と長距離にしては速いペース。しかし、展開や他馬の動向を注視せず、ただひたすら馬のリズムを尊重した。前日に四位師にアドバイスをもらい、「2周目の下りをいい感じで回ってこれれば」と仕掛けどころだけは注意。勢いをつけて直線に向かい、横綱相撲で押し切った。

 岡田師は22年目で念願のJRA・GⅠ勝利をつかんだ。「絶好の位置で運んでくれた。状態も良かったし、安心して見てられたけど、内心は…」と心の内を明かす。しかし、直線抜け出した場面では、声をからすのではなく「何ちゅう馬や」とロイヤルの強さに感嘆していた。

 「今日も上がってきて本当に走ったという息遣いではなかった。すごい心肺機能。まだこの馬は良くなる」。春の大目標だった盾を手にした。今後はひとまず白紙だが、ここは通過点と言わんばかりの表現で、馬のタフさをたたえた。

 13年目の菱田はデビューからずっと岡田厩舎に所属。いつか師匠の馬でGⅠをという大願も成就した。「岡田厩舎の馬でGⅠを勝てたのは本当にうれしい。また、向上心を持って、騎手としての技術を高めていきたいです」。大きな夢をかなえた人馬は慢心することなく、次なるドラマへと突き進む。