フィギュアスケート男子の冬季五輪2大会連続メダリストで、2022年と23年の世界選手権を連覇した宇野昌磨(26)=トヨタ自動車=が9日、現役引退を表明した。自らのインスタグラムを更新し、「現役選手を引退する決断を致しました」と発表した。14日に記者会見を行い、現在の心境や今後の活動などについて、自らの言葉で説明する。

 宇野昌磨の現役引退と発表を聞いて、頭の中にまず思い浮かんだのはモスクワのリンクで見せてくれたとびきりの笑顔だった。同行取材した2019年のGPシリーズ・ロシア杯。公式練習後の宇野はこう強調した。

 「スケートが好きなんだというのを、自分の気持ちを(大会までに)確かめることができた」

 今思うと、スケートが好きという姿勢が宇野を銀盤へ駆り立て続けたのではないだろうか。19年は山田満知子コーチらのもとを離れて序盤戦に臨んだが、GPシリーズ初戦のフランス杯は8位。激励の「ショーマ」コールに大粒の涙を流した。モスクワで見たのはその大会以来の滑り。「どん底」という状態の中で見つめ直したスケートが好きという思いが全ての構成要素に詰まり、弾むように演技していた。

 人一倍の練習でジャンプに加えて表現面もいちずに追究した宇野。スケートが好きだからこそ、競技に対していつも真摯(しんし)だった。独特な”昌磨節”に苦笑いすることもあったが、会見でどんな言葉と表情を残すのか。「ありがとう」の思いとともに見守りたい。(冬季五輪種目担当デスク・川越亮太)