◇記者コラム「Free Talking」

 アウェー遠征を趣味にするJリーグサポーターにとって、今季最大の関心事の1つが、広島の本拠地・エディオンピースウイング広島(Eピース)の開場だろう。名古屋グランパス担当の記者も、大型連休の最終日に取材に向かった。

 最初に感じたのは、応援の迫力だった。昨季までのホームだったホットスタッフフィールド広島は、すり鉢状の陸上競技場のためか、他の陸上競技場と比べても、メインスタンドからゴール裏が随分遠く見えた。

 Eピースは、ホーム側のゴール裏の席数が多いこともあって、熱気と声援がスタジアム全体を包んでいた。サッカー専用競技場を望んできた広島のサポーターにとっては、まさに感涙ものだろう。

 メインビジョンの高精細さにも驚いた。ソニー製のLEDビジョンで縦9メートル横32メートル。初めて4Kテレビを見たときのような感覚だった。これまでがドット絵だったことを考えれば、3Gのガラケーがいきなり5Gのスマホになったような気分だ。

 他のクラブからも、注目されている。グランパスは、建て替え中のパロマ瑞穂スタジアム(名古屋市瑞穂区)が2026年に開場予定。訪れた担当者は「街の中のスタジアムの位置付けを知りたかった」という。東には広島城、南には原爆ドームがあり「広島を代表するシンボルに近い」とうなずいた。

 一方で記者も感じたことは「意外と駅からは距離がある」ということだった。6月11日に日本代表のシリア戦が予定されているが、観戦予定の人は余裕を持って計画した方がいいかもしれない。ただ、南の停留所から歩くならば、イベントスペース横を通ることになり、イベント気分を味わうには、悪くない。

 総じて言えるのは、盛り上がりは発展途上だということ。以前、広島市中心部の飲食店の店主から「連覇したときも街は静かだった」と聞かされたことがある。街の風景にサンフレッチェが溶け込めば、存在感が増すことは必至。他のクラブからみれば、より脅威となるかもしれない。(サッカー担当・林修史)