有馬嘉男氏も復帰

 NHKは2月14日、2024年度の主な番組キャスターを発表した。18年ぶりに復活する「新プロジェクトX 挑戦者たち」に欧州総局から有馬嘉男氏が舞い戻るなど、「大移動」とも形容される人事となった。絶対エースとされる和久田麻由子アナの降板に端を発した人事についてお伝えする。

 大移動のきっかけとなったひとつがエース・和久田麻由子アナの産休だった。「ニュースウオッチ9」のキャスターを務めていた2022年春、第一子を妊娠して産休に入った彼女は翌23年4月、一番の看板ニュース番組「ニュース7」のキャスターとして復活を果たした。

「ここ数年のアナウンサー・キャスター人事は、本人の望むと望まざるとにかかわらず、和久田アナを中心に回っていた印象がありました。いわば『和久田天動説』ですね」

 と、NHK局員。その和久田アナが第二子を妊娠していることがわかり、「ニュース7」を降板することが明らかになり、「人事のところてん」が始まる。

 その流れと相前後し、「ウオッチ9」にも人事異動が持ち上がっていくことになった。

全員交代の「ウオッチ9」

「ウオッチ9」はそれまで、田中正良、林田理沙、そして青井実の各氏という陣容だった。

「ワシントン支局長経験者の田中氏は報道のメインストリームの出でしたが、林田アナは『ブラタモリ』の元アシスタントですし、青井アナも含めてわかりやすく言えばエンタメ系の色が濃い構成でした」(同)

 硬さよりも柔らかさで大衆受けを狙ったというところか。ただ、そういった狙いとは裏腹に視聴率は低空飛行が続いた。加えて、ワクチンの接種後に亡くなった人の遺族に関する報道で、BPO(放送倫理・番組向上機構)から放送倫理違反を指摘されるに至った。

「ある意味で現状のラインナップを維持するのが難しい中で、去年暮れごろに青井アナをめぐって親族が経営に関与する企業との不適切な関係が浮上しました。青井アナはそれがなければ今春からスタートする大型情報番組のMCもあり得たのですが、結局、番組を降板するのみならず退局してフリーとなり、フジテレビの『Live News イット!』のキャスターに就任することが固まりました」(同)

副会長の厳命

「ウオッチ9」のキャスターは総シャッフルとなり、広内仁キャスター、佐藤真莉子キャスター、星麻琴アナという新体制が決定した。

 広内キャスターは、報道局やワシントン支局に勤務し、現在は政治部副部長デスク。佐藤キャスターはTBSで営業を担当した後に入局し、報道局やアメリカ総局に勤務し、現在もアメリカで取材を続ける身だ。星アナについてはよく知られるようにTBSの三雲孝江元アナを母に持ち、現在は「日曜討論」の司会を務めている。

「リニューアルにあたっては“記者2人の起用”を前提にしていました。現在、副会長を務める井上樹彦氏がアメリカの中枢を取材したことがある人材を起用すべく号令をかけ、白羽の矢が立ったのが広内・佐藤の両名だったようです。アメリカ大統領選の年であることが意識されての起用なのかもしれません」(同)

 先代のエンタメ色とは打って変わって報道色ががぜん強まった格好だ。

 一方の「ニュース7」はこれまで和久田アナと瀧川剛史アナが平日を担当してきたが、4月からは副島萌生アナと糸井羊司アナに交代となった。

ニュース7の死角

 糸井アナは今回の人選にあたって、「『ニュース7』、今年31年目でこの春からは32年目に入りますが、平日の歴代のキャスターの担当開始当時の年齢を調べましたら私は最年長でした。よってフレッシュさは皆無です」などといったコメントを公開していたが……。

「糸井アナはナレーションも素晴らしく、現場での対応能力も高く順当な人選だと見られています。副島アナについては、報道希望だったのでやる気にあふれていると思いますが、若干微妙な評価もあります。やや“自己アピール”が強いといいますか、自身を中心に考えて振る舞いがちで、それが現場から敬遠されることがありました。実際、以前に担当していたサンデースポーツを外れたのはそういったキャラクターも影響しているようです」(同)

 しかし「もっと私を出演させてください」などと、上層部に直談判するような胆力もあるようで、その辺りが今回の人事に奏功したのだろうか。

「現場とどれくらいうまくやっていけるかというのが今後の課題でしょうね。まあ現場を仕切る人間も今の時代、パワハラとかモラハラを気にして細かな指示をしなくなったりしているので、その意味で軋轢は生まれにくい。結局はシンプルにお茶の間を味方にできるか否かということかもしれません」(同)

デイリー新潮編集部