未婚の女性皇族もわずか5人に

「高円宮家の承子さまがお酒を嗜まれることは知られていますが、私がまだ現役の皇宮護衛官(皇宮警察の警官)だった15年程前はカクヤスをよく利用されていました。偉ぶらず気さくなお人柄が懐かしい」

 皇警OBがこう振り返る。カクヤスは、安売り競争から軌道修正して「東京23区や神奈川、埼玉、大阪の一部ならビール1本から送料無料で即日配達」を掲げて急成長した宅配酒店グループ。有名銘柄のワインを揃えた高級路線とは一線を画し、手軽で庶民的なイメージだ。

 承子さまは、男性の若い成年皇族不在の中で皇室を支えている、未婚女性の成年皇族5人のうちの1人。ただ旧民主党政権が2012年に行った論点整理で、結婚後も皇族のままとされた天皇の子や孫に当たる内親王ではない。承子さまの本音は「外されてしまった」なのか「逃れることが出来た」なのか、果たしてどちらか。取材を基に解説したい。

 承子さまは1986(昭和61)年3月8日、高円宮家の3姉妹の長女としてご誕生。今年で38歳になられた。大学は皇室伝統の学習院ではなく、留学先の英エディンバラ大から帰国して、早大を卒業されている。現在はガザの人道危機などの緊急募金に取り組んでいる日本ユニセフ協会に、2013年4月からご勤務されている。

 ラグビーの普及に尽力して「スポーツの宮さま」と呼ばれた大伯父・秩父宮の遺志を継ぎ、特にサッカーの振興に尽力し、同じく「スポーツの宮さま」と称された父・高円宮は2002年11月に47歳の若さで急死した。その父と同様に日本サッカー協会の名誉総裁をされている母・久子さまをお手本として、承子さまは全日本アーチェリー連盟と、日本スカッシュ協会の名誉総裁を務められている。

 女性皇族5人の内訳を整理しておこう。「内親王」が天皇家の長女・愛子さまと秋篠宮家の次女・佳子さま。「女王」が寛仁親王家の長女・彬子さまと次女・瑤子さま、そして承子さまだ。

 承子さまの妹は共に既婚者で、宮家の次女・千家典子さんは学習院大を卒業。2014年10月に出雲大社の権宮司・千家国麿さんと結婚した。典子さんは久子さまと共に出雲大社を参拝した際に出会い、そこから交際に発展した。一方、3女の守谷絢子さんも学習院大を選択せずに城西国際大を卒業。2018年10月に日本郵船社員の守谷慧さんと結婚した。出会いは2017年12月、守谷さんの母親と生前親しかった久子さまのご紹介によるものだった。親を亡くした経験を共有していることが2人を強く結びつけたとされる。絢子さんは2019年11月に長男を出産し、2022年9月には次男を出産している。

久子さまはメガバンクがお嫌い?

 妹2人に共通するのは、久子さまが出会いを“仲介”され、背中を押されたという点。皇室は戦前、日本郵船の最大株主だったため、婚家が皇室と深い関係にあることも共通点だ。一方、承子さまはメガバンク勤務の男性と交際を噂されたこともあったが、久子さまはご結婚に諸手を挙げての賛成ではないようだ。その理由は、面会時の印象が決して良くはなかったなど諸説ある。だが宮内庁元幹部は異説を唱える。

「長女と母親の関係は“こじらせ母娘”と“疑似姉妹”に大別されると言われますが、久子さまと承子さまは後者でしょう。久子さまは2言目には『承(つぐ)が』『承は』と口にされ、3姉妹の中でも承子さまへの思い入れは特にお強い印象です」

 こう前置きした上で、

「上皇陛下は1993年、還暦の誕生日会見で長女の紀宮さま(黒田清子さん)について『結婚はまだ少し先にして欲しい』と心情を吐露されています。父親は娘を溺愛するものですが、一般家庭のように“出戻り”という訳にはいかない女性皇族の父親はなおさらでしょう。16歳で高円宮さまと死別した承子さまにとって、久子さまは母であるとともに父であり、久子さまもそういうご感覚のはずです。承子さまの幸せを願う一方で父としての複雑な思いがおありになるのだと感じます」

 と指摘する。ところで黒田清子さんは結婚前、紀宮さまと呼ばれていたが、正式には紀宮清子さま。これは小室眞子さんが秋篠宮眞子さまと言われていたのと同じだ。ただ眞子さまは通常、秋篠宮さまではなく眞子さまと称されていた。理由は天皇家の子女には「〜宮」という「称号」があるが、秋篠宮家のような宮家の子女は称号が与えられないからだ。

 宮家にあるのは苗字(姓)のような「宮号」で、小室眞子さんも佳子さまも結婚前は「眞子さま」と「佳子さま」。姉妹それぞれが別々に秋篠宮さまと呼ばれることはない。宮号は家主に与えられたもので、子女個々に贈られたわけではないから、秋篠宮さまというだけで通じるのは家主のみとなる。
 
 そのため、小学校時代の友人たちなどから高円宮を苗字のように捉えて親しんでもらっておられた高円宮承子さまも、あくまで「承子さま」であって高円宮さまと報じられることは今後も決してない。紀宮というのは唯一無二の呼称なので、宮家とは全く異なるというわけだ。だがここで1つ疑問が湧く。紀宮清子さまは結婚前、ずっと「紀宮さま」とニュースで取り上げられていたが、愛子さまは正式には敬宮愛子さまなのにもかかわらず「敬宮さま」ではなく幼少期からずっと「愛子さま」と報道されてきた。宮内庁旧東宮職での勤務経験がある元職員は「愛子さまの方が一般的で、『愛』の文字が入っていることで親しみやすかったのでそうなりました」と説明した。

「はめられた」と言い切った親心

 話を承子さまに戻す。

「『はめられた』と久子さまがおっしゃっていたと聞きました」

 宮内庁関係者は、そう話す。承子さまは英国留学中、自由奔放な生活ぶりを一部雑誌に報じられた。この時、久子さまは近しい人に、

「海外で生活してれば少しぐらいハメを外すのが普通。雑誌側は売れるネタがなかったから、承(つぐ)が狙い撃ちにされた。はめられたようなもの」

 と、承子さまを庇(かば)われていたとするエピソードだ。承子さまに対する久子さまの信頼度の高さを如実に物語る逸話と言えるだろう。
 
 宮内庁プロパーの元幹部はこう語る。

「幸せに巣立つことを望まれる一方で、『今のままでいい』とのお気持ちも強い久子さまと、お母さまを1人にしてしまうことに抵抗感がおありになるように感じられる承子さまは、相互の執着心が強固な印象です」

 また宮邸や寛仁親王妃信子さまの住まれる宮内庁分庁舎などの皇族邸は国有地の国有財産。結婚後も同居を続けるには家賃の問題などクリアしなければならないハードルは多く、一般家庭のように2世帯住宅といった自由な選択はほぼ不可能だ。
 
 さらに一般サラリーマンの平均年収は414万円で、女性に限ると356万円。一方で皇室経済法では愛子さま以外の4人に支払われている皇族費は、年収にして佳子さまが915万円、彬子さまと瑶子さま、承子さまは各々640万円(愛子さまは予算上の費用項目が皇族費とは異なる)だ。夫に頼らなくとも生活していけることが「久子さまが承子さまのご結婚に前向きになり切れない要因の1つなのかもしれません」と前出の宮内庁関係者は推測する。

 既出の皇警OBは「承子さまは、絢子さまのお子さまが可愛くて仕方ないようだとお聞きしました。子供好きのイメージはありませんでしたが、母性が優るということなのかもしれません」と述べた上で、こう締めくくった。

「皇族であろうがなかろうが、ご結婚後は親子の同居が簡単ではない以上、ゴーイングコンサーン(現状維持)がお望みなのかもしれません」

朝霞保人(あさか・やすひと)
皇室ジャーナリスト。主に紙媒体でロイヤルファミリーの記事などを執筆する。

デイリー新潮編集部