大谷は口裏合わせを拒否

 先日、米捜査当局に訴追された、大谷翔平(29)の元通訳・水原一平容疑者(39)。事件が米国に住む彼の家族に与えた深刻な影響、そして専門家に聞く、具体的な量刑とは――。【前後編の後編】

 ***

 水原容疑者は弁護士を通して家族への謝罪の気持ちを述べていた。

「『ニューヨーク・タイムズ』紙によれば、3月20日の試合後、ソウルのホテルの地下会議室で水原は大谷と向き合い、ことの経緯を打ち明けた。そして『借金を肩代わりしてくれたことにしてほしい』と口裏合わせを懇願したものの、大谷はこれを拒否しています」(ジャーナリスト)

 ここで情にほだされて道連れとなれば、選手生命を絶たれかねなかったのだが、

「直ちに代理人のネズ・バレロ氏や危機管理担当広報、そして別の通訳も呼び、あらためて水原の弁明をもとに協議し、そこには水原の妻も同席した。直前まで何も知らされていなかったという彼女の受けた衝撃は、計り知れません」(同)

「表の玄関ではなく裏手のガレージのシャッターから家に…」

 また、ロス郊外の和食居酒屋で板前を務める父親の英政さん(64)は、一連の騒動が発覚して以降、出勤がかなわなくなっているという。

「30年以上住む自宅は、車で30分ほどの距離にあります。玄関には、最近取り付けたとみられる監視カメラが目を光らせていますが、一日中ひっそりと静まり返って夜も電気がともりません。近隣ではもっぱら『もう引っ越したのではないか』と言われていました」(近くの住民)

 それでも、

「先日、ご夫婦で歩いている姿を見かけたのですが、表の玄関ではなく裏手のガレージのシャッターを開けて家に入っていきました」

「厳しい量刑が想定される」

 カリフォルニア州弁護士の資格を持つ東町法律事務所の村尾卓哉弁護士が言う。

「水原容疑者が問われている連邦法の銀行詐欺罪は、禁錮30年以下または100万ドル以下の罰金が科せられます。もし司法取引をして、次回の罪状認否で罪を認めるのであれば、裁判所は陪審員裁判をせず量刑判断に入ります。今回の保護法益は銀行という社会的インフラの信頼性ですが、実際に金銭的被害を受けているのは大谷選手であり、盗まれた1600万ドルを銀行は補填してくれません」

 大谷は“泣き寝入り”を余儀なくされそうなのだが、

「被害は相当な額にのぼり、厳しい量刑が想定されます。交渉次第で司法取引の内容は変わってきますから、ここは弁護を務めるマイケル・フリードマン弁護士の腕の見せどころでしょう」

 実際のところはといえば、

「連邦法に基づく禁錮刑は、法令と連邦の量刑ガイドラインによってコントロールされています」

「国外退去処分の対象に」

 元連邦検察官でカリフォルニア州弁護士のジョン・カービー氏は、そう前置きしながら、

「司法取引で有罪を受け入れた場合、今回のように1600万ドルの損失だと、その幅は禁錮51〜63カ月となりますが、当局がコンピューター使用など手口の巧妙さなどを理由に量刑を増やすよう主張すれば、これが78〜97カ月になります」

 さらに続けて、

「被害額が1万ドルを超す銀行詐欺は、米国の法律では『加重的重罪』に該当します。つまり、イッペイ氏が米国の市民権を持っていなければ、有罪判決を受けた場合は(刑の終了後に)国外退去処分の対象となるでしょう」

 アメリカからの「永久追放」が、現実味を帯びてきたのだ。

 前編では、7000万円ほどかかると想定される水原容疑者の弁護費用の出どころなどについて報じている。

「週刊新潮」2024年4月25日号 掲載